研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


文化遺産国際協力コンソーシアム平成25年度総会および第14回研究会「文化遺産保護の国際動向」の開催

講演風景

 2014年3月7日(金)に標記総会および研究会を開催しました。総会では、例年通り、コンソーシアムの平成25年度事業報告と平成26年度事業計画を事務局長より報告しました。続いて行った研究会では、国際交流基金理事長の安藤裕康氏による「文化を通じる国際協力と交流―双方向性に向けて」と題する基調講演ののち、文化遺産保護に関する最新の国際動向について、昨年開催された各分野の国際会議での議論を中心に、4名の方にご報告いただきました。
 まず、文化庁主任文化財調査官の本中眞氏より、富士山の世界遺産登録を事例に、登録に至るまでの審議の過程や世界遺産登録後の課題についてお話しいただきました。続いて企画情報部情報システム研究室長の二神葉子より、ユネスコ無形文化遺産保護条約第8回政府間委員会での審議内容についての報告とともに、委員会で議論となった事項や最近の同条約をめぐる問題についての発表がありました。 さらに、国立文化財機構本部の栗原祐司事務局長にご登壇いただき、ICOM大会招致に向けて、ICOM日本委員会が行っている活動や今後の見通しなどについてご発表いただきました。 最後に、コンソーシアムの前田耕作副会長より昨年イタリアのオルビエトで開催された第12回バーミヤン専門家会議での議論に関するご発表がありました。
 今回は約100名のかたの参加がありました。コンソーシアムでは例年同様のテーマの研究会を開催しておりますが、参加者のみなさまには文化遺産保護をめぐる最新の国際動向について情報共有し、意見交換していただく場として活用していただいております。今後も、研究会等を通じた情報共有に取り組んでいきたいと思います。

「さまよえる文化遺産―文化財不法輸出入等禁止条約10年―」の開催

シンポジウム会場風景
パネルディスカッションの様子
イタリア カラビニエリ(国家治安警察隊)クアリアレッラ氏による講演

 文化遺産国際協力コンソーシアムでは、毎年一般の方を対象にシンポジウムをおこなっています。今年度は12月1日(土)に、東京国立博物館平成館大講堂にて、「さまよえる文化遺産―文化財不法輸出入等禁止条約10年―」(主催:文化遺産国際協力コンソーシアム、文化庁)として開催しました。
 「文化財の不法な輸入・輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」(「文化財不法輸出入等禁止条約」)を我が国が締結してから今年で10周年を迎えました。今回のシンポジウムでは、この条約のもとで我が国が進めている文化財を不法な輸出入から保護する取り組みや現状について紹介するとともに、海外での取り組みも紹介しました。
 まず、我が国の取り組みについて文化庁の塩川達大国際協力室長から、また地方自治体による取り組みとしては奈良県警察本部の文化財保安官である辻本忠正警視からそれぞれ報告していただきました。文化財流出の現状については美術商である欧亜美術店主の栗田功氏をお招きし、文化財が流出する国における流出文化財問題の根底にある部分をご紹介いただきました。また、外国の事例として、イタリアからお招きしたカラビニエリ(国家治安警察隊)のクアリアレッツラ文化材権利保護作戦班長から、カラビニエリによる文化遺産保護活動を、美術品変造や不法輸出摘発の実際の事例とともに報告いただきました。すべての報告後には、報告者に加えて財務省関税局監視課からも五十嵐一成課長補佐をパネリストに迎え、活発な議論が展開されました。
 日頃は話を聞く機会の少ない問題でありながら、実際には身近な問題を扱った今回のシンポジウムは、来場者である一般の方々からも高い評価を得ることができました。今後も文化遺産国際協力コンソーシアムでは、文化遺産に関わる問題を一般の方々にご理解いただける機会を設けることができればと考えています。

第11回文化遺産国際協力コンソーシアム研究会「ブルーシールドと文化財緊急活動-国内委員会の役割と必要性-」の開催

 2012年9月7日(金)に第11回文化遺産国際協力コンソーシアム研究会「ブルーシールドと文化財緊急活動‐国内委員会の役割と必要性‐」を開催しました。今回の研究会では阪神淡路大震災や東日本大震災から文化財を救った経験をふまえて、今後の我が国での文化財緊急保護活動を考える上での1つの視点としてブルーシールドに焦点を当てて議論を行いました。
 基調講演ではUSブルーシールド国内委員会のコリン・ヴェグナー代表をお招きし、アメリカでの国内委員会設立のご経験や、USブルーシールドによるハイチでの緊急支援活動などをご紹介いただきました。講演では東日本大震災後の文化財レスキュー(動産)や文化財ドクター(不動産)の活動、また図書館の防災など、我が国での文化財の緊急対応の現状が紹介され、問題点などが指摘されました。
 パネルディスカッションでは、それぞれの分野で緊急支援として何が必要とされているのか、またそのために日本で必要となっていくブルーシールドのあり方など、今後の我が国での緊急支援活動を考える上で非常に重要な議論が進められました。また、国内での緊急対応だけでなく、国際協力の観点からも日本の経験と技術を生かす必要があるとの指摘もなされました。
 今回の研究会は博物館、建造物、図書、歴史資料、フィルムなど幅広い分野の専門家が一堂に会してブルーシールドとは何かを議論する初めての研究会でありましたが、今後日本での文化財緊急支援の将来を考える上でとても重要な一歩となる会合となりました。
 今後もコンソーシアムでは、最新の情報を共有する場として、幅広い内容で研究会を企画していきます。

第4回大洋州世界遺産ワークショップへの出席

サモアの伝統的儀式の様子
会議場の様子

 9月5日から9日まで、サモアのアピアでUNESCOの第4回大洋州世界遺産ワークショップが開催されました。大洋州は全地表の3分の1の面積を占めているにもかかわらず、世界遺産の登録件数は多くありません。そのためUNESCOは、自国の文化や自然の世界遺産登録を目指す大洋州の島嶼国の代表者を集めて、そうした取り組みを支援するためのワークショップを開催しています。文化遺産国際協力コンソーシアムでは、今後増加すると思われる大洋州の国々からの文化遺産保護に関する支援要請に備えるため、今回のワークショップにオブザーバーとして参加しました。
 会議には13の島嶼国と2つの海外領のほかに、オーストラリアとニュージーランドがドナー国として、またICOMOSやIUCN等の諮問機関も参加しました。これまでの各国の取り組みと世界遺産登録に向けた準備の進捗状況が報告され、また大洋州が一丸となって取り組んでいくための核になる大洋州遺産ハブの形成などについて検討されました。
 大洋州はこれまで自然遺産の保護に積極的な地域でしたが、今後は文化遺産についても積極的に保護し、博物館などの整備に向けても取り組みを進めたい姿勢が感じられました。また、無形遺産にも関心が高く、今後は大洋州諸国から無形的側面を含めた文化遺産の保護に関する支援等が要請されるのではないかと予測されます。

ミクロネシア連邦における文化遺産国際協力コンソーシアム協力相手国調査 ~ナン・マドール遺跡~

王の墓といわれるナン・ダワス
ミクロネシア連邦政府側との打ち合わせ
干潮時遺跡調査

 文化遺産国際協力コンソーシアムでは2月18日から25日まで、ミクロネシア連邦のナン・マドール遺跡を対象として協力相手国調査を実施しました。この遺跡は6世紀から16世紀の間につくられたと伝えられており、92もの人工島とその上に建つ建造物からなっています。現在でも遺跡の全容は解明されておらず、神秘の遺跡といわれています。今回の調査は、遺跡の現状を調べるとともに、遺跡保護のために何が必要か把握し、我が国の協力の可能性を検討することを目的として行いました。
 玄武岩の石柱を重ねてつくられた建造物には、崩壊した部分も多く見られました。その要因としては、自然風化やマングローブなど植物の繁殖が影響していると考えられます。さらには近年の温暖化にともなう水位上昇により、満潮時に水没する遺跡も見られました。このような点について今後詳細な調査を行い、管理計画を策定する必要があると考えられます。同時に、遺跡保護に関する現地の人々の理解を促進することも不可欠でしょう。いくつかの島や建造物は王の墓や祭儀場であったと伝えられています。遺跡そのものを守るとともに、このような伝承も含めた包括的な保護を図る必要性を強く感じました。

第6回文化遺産東アジアネットワーク会合

 文化庁の依頼により、インドネシアのソロで開催された第6回文化遺産東アジアネットワーク会合に参加しました。会合には、アセアン諸国と東アジア3カ国(日本・中国・韓国)の代表が参加し、アセアンが展開している各プロジェクト報告が行われました。センターからは、文化庁から受託している文化遺産国際協力コンソーシアム事業の枠組みで平成21年度に実施した「被災文化遺産復旧に係る調査」の報告を行いました。報告に対し参加国からは、今後も被災文化遺産に関する調査、ワークショップ、会議などを積極的に行ってほしいとの希望が示されました。
 韓国からは文化財研究所保存科学センター長が参加しており、第7回会合は韓国で開催される予定です。アセアン諸国と東アジア諸国の関係性を深めるうえでも、今後、本会合の重要性はより増していくと考えられます。

第8回バーミヤーン遺跡保護専門家会議への出席

出席者記念撮影
会議風景

 アフガニスタンの、バーミヤーン大仏が破壊されて7年が経ちます。国際社会はアフガニスタンの安定と発展を願いつつ、破壊されたアフガニスタンの文化遺産保護に尽力しています。東文研は当初から保存指針や計画の策定にかかわり、プロジェクトの中心的な役割を果たしています。3月25日、26日にユネスコをはじめとする国際機関、関係各国の専門家・研究機関等による第8回バーミヤーン遺跡保護専門家会議が、ドイツのミュンヘンで開催されました。
 アフガニスタンは現在でも治安が安定せず、継続的な保存修復等の活動が難しい状況にあります。こうした中で国際社会は何ができるのか、遺跡や破壊された大仏をどのように活用していくのか、という問題が熱心に議論されました。日本はユネスコ文化遺産保存日本信託基金のドナー国として大きな存在感を示しました。 会議を通じて、文化遺産保護の国際協力が今後のアフガニスタンの安定につながっていくことを心から願わずにはいられませんでした。

文化遺産国際協力コンソーシアム協力相手国調査:ブータン

寺院風景
国立図書館における経典修復作業
ジグメ・ティンレイ首相表敬

 文化遺産国際協力コンソーシアムでは、2月14日から23日までブータンでの協力相手国調査を実施しました。
 本調査では、同国に対する文化遺産保護分野での協力の可能性を探ることを目的に、ブータン人にとっての文化遺産の概念から、法制度や技術面における保護の現状、国際協力の状況、協力ニーズに至る多方面の情報収集および関係機関との意見交換等を行いました。
 敬虔な仏教国ブータンでは、文化遺産はまさに人々の日常生活とともに息づいています。伝統文化の継承発展を国是とし、国情にふさわしい文化遺産保護のあり方を模索している彼等の真摯な努力を目の当たりにするほどに、日本として今後どのような協力が望まれるか、慎重にそして着実に検討する必要性を強く感じています。

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