研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


保存修復科学センター研究会「三角縁神獣鏡の謎に迫る-材料・技法・製作地-」

パネル討論では三角縁神獣鏡の製作に関する新解釈をめぐり、活発な議論が展開されました。

 文化財の原材料や製作技法についての詳細な研究から、保存修復やその歴史研究に資する重要な情報が得られます。今回のテーマには、前期古墳から大量に出土し魏鏡か倭鏡かで論争が続けられている三角縁神獣鏡を取り上げ、材料・形態などの製作情報から製作時期などの歴史情報をいかに引き出すかについて検討しました。鈕孔形態と外周突線という新しい視点を導入して三角縁神獣鏡の研究に画期的な進展をもたらした福永伸哉氏と、青銅器の鉛同位体比を多数測定し三角縁神獣鏡の材料についての新しい解釈にたどり着いた馬淵久夫氏を講師にお招きし、パネル討論には難波洋三氏、斉藤努氏も交えて活発な意見交換がありました。馬淵氏から三角縁神獣鏡の製作時期について新しい解釈が示され、自然科学的手法を利用した歴史研究の奥深さを理解できた有意義な研究会となりました。(平成20年6月20日(金)、於:東京文化財研究所 地下セミナー室、参加者60名)

特別史跡・キトラ古墳壁画の保存修復

キトラ古墳壁画(天井天文図) 北半分を取り外した後

 東京文化財研究所では文化庁からの受託事業で、「特別史跡キトラ古墳保存対策等調査業務」を行っており、その中で、石室内の定期点検や壁画の取り外しなどを進めています。
 特に天井天文図では、平成19年7月に一部のはく落が確認されて以来、順次取り外し作業を進めてきました。最初は、落下の危険性が極めて高い部分を、小さな範囲で取り外しておりましたが、取り外しに使う道具類の改良などにより、現在では一辺10㎝程度の壁画片を取り外すことが可能となりました。その結果、平成20年6月末には、奎宿(けいしゅく)および外規北側を取り外し、南側半分を残すのみとなっています。今後、定期的に取り外し作業を継続し、天井天文図については今年度中に全て取り外すことを目指しています。

敦煌莫高窟での壁画調査と研修生派遣

第285窟での共同調査
調査チーム(オレンジユニフォーム)と研修生(赤ユニフォーム)

 第5期「敦煌壁画の保護に関する共同研究」は3年目を迎え、6月1日から4週間の日程で敦煌莫高窟にメンバーを派遣して、今年度前半の日中合同調査を実施しました。調査は、昨年に引き続き、西魏時代の紀年銘(西暦538年、539年)を持つ第285窟について、これまで実施してきた光学的調査とともに壁画全体に対する状態調査を行いました。壁画に使われた材料は、色の種類や技法、描かれた位置など、様々な条件によって劣化の仕方、保存状態が異なります。この状態を把握することで、光学調査の結果はさらに多くの情報をもたらすことになりますし、そこから新たな調査や分析についてのアイディアも生まれるのです。また、特定の制作材料や技法によって劣化の仕方が異なるのであるとすれば、それは今後の保護修復作業にも重要な手がかりを与えるものとなります。
 いっぽう、この調査チームとともに2名の大学院修士課程修了者が莫高窟に行きました。彼らは、昨年度から実施している「敦煌派遣研修員」として、公募により選抜されました。保存科学、絵画制作とそれぞれに異なる専門領域からの参加で、10月中旬までの5ヶ月間、敦煌研究院保護研究所の専門家の指導を受けて、壁画保護のための多岐にわたる内容の研修を受けます。

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陝西唐代陵墓石彫像保護修復事業専門家会議

日中専門家会議
橋陵の現場で掛けられた「熱烈歓迎」の横断幕

 2004年度以来、西安文物保護修復センターと共同で推進している「唐代陵墓石彫像保護修復事業」は、今年で最終年度を迎えます。6月23日と24日の2日間、西安市で最終年度の日中専門家会議が開催され、昨年度の作業内容についての検証と評価が行われました。日本からは、西浦忠輝氏(国士舘大学教授、文化財保存)と根立研介氏(京都大学教授、美術史)が専門家として出席されました。昨年度は、事業の対象となっている3つの陵墓のうち、特に唐睿宗の陵墓である橋陵の東西北門での考古学調査と整備作業が進められました。今回は地元民が多数見物に出る中、日中専門家が現地視察を行いました。また、去る5月12日に発生した四川大地震では陝西省も被災しましたが、対象陵墓である順陵では南門の獅子像の亀裂に顕著な拡大が見られ、そのため急きょ設置された観測装置についての視察も行いました。本事業は11月に石造文化財の保護に関する日中学術研究会を開催し、来年3月に最終の審査会を経て終了する予定です。

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モンゴルにおける拠点交流事業(予備調査)

アマルバヤスガラント寺院
アマルバヤスガラント寺院の視察

 今年度から始まった拠点交流事業の準備として、6月9日から14日までモンゴルを訪れました。本事業では本研究所の無形遺産部とともに、組織や法律など文化財保護の枠組みに関するワークショップの開催や、教育文化科学省所管の国立文化遺産センターに対する専門家育成のための研修事業を計画しています。教育文化科学省文化芸術局長との会談は、事業開始にあたって当研究所との合意書と覚書の締結を快諾していただくなど、友好的な雰囲気に終始しました。
 また、首都ウランバートルの北方約350kmにある、モンゴル最大級の木造建造物であるアマルバヤスガラント寺院を視察しました。この寺院では、1970年代初めから80年代半ばにユネスコを通じて派遣された日本人専門家による調査や修復事業が行われました。しかし現在は管理が不十分で、教育文化科学省の専門家は、緊急対応を要すると話していました。たしかに、屋根や彩色だけでなく構造上の劣化も発生している状態でした。ここでの議論を通じて、両国は、来年度以降実施する専門家養成に建造物関連の内容も含めたいと考えるようになりました。
 さて、6月末の総選挙の後、ウランバートルでは結果への不満を表すデモが暴動化し、当研究所のカウンターパートとなる文化遺産センターも焼き討ちに遭い、建物や機材、文化財が被害を受けました。関係者にお見舞い申し上げるとともに、大使館や関連分野の専門家と情報を共有し、緊急対応の可能性を探っているところです。

平成19年度自己点検評価の結果

 5月19日に自己点検評価に関わる外部評価委員会が開催されました。当日は、独立行政法人国立文化財機構として平成19年度に実施した事業全般について、その実施状況や成果を委員に提示して説明し、意見をいただきました。後日、各委員の評価や意見を参照しつつ、自己点検評価をまとめました。以下に、東京文化財研究所の事業に対する自己点検評価の結果の概略をお伝えします。
 東京文化財研究所が中期目標の実現のために平成19年度に設定した事業は、調査・研究、国際協力の推進、調査・研究成果の公開や情報の発信、国や地方公共団体等に対する協力・助言など多岐にわたります。外部評価委員から最も高い評価をいただいたのは、高松塚古墳・キトラ古墳の壁画保存関連事業への協力でした。国民が注目する中で、東京・奈良の両文化財研究所は困難な事業を計画以上に達成したと評価されました。国際協力事業では、中国・韓国との間に成熟した協力関係を発展させつつあること、カンボジアやアフガンなどにおいて、困難な状況下で支援を発展させたことが注目されました。また、研修の実施や積極的な助言等によって、各種の文化財に関わる人びとの知識や技術のレベルアップに寄与し、人材育成に貢献したことも高く評価されています。しかし、それら事業の成果が国民に充分に伝わっているとは言いがたい面があり、情報の発信機能をより高める努力が期待されています。自己点検評価を行った結果、平成19年度のすべての事業は順調に実施され、充分な成果があがっていると判定しました。自己点検評価の結果は、今後の事業計画の策定や法人運営の改善に反映させます。

国立韓国伝統文化学校との文化交流に関する協定の締結

握手を交わす鈴木規夫所長(左)と李鐘哲総長(右)
国立韓国伝統文化学校一行との記念撮影
東京文化財研究所職員との記念撮影

 平成20年5月13日、東京文化財研究所と国立韓国伝統文化学校の間で、文化交流に関する協定が結ばれました。協定は包括的な交流の推進に関するもので、韓国伝統文化学校と当研究所が、学術研究、教育の分野における文化交流を実施することにより、文化遺産保護の促進に資することを目的としています。
 国立韓国伝統文化学校からは李鐘哲総長をはじめとする4名の方々を迎えて、当研究所において調印式が行われ、大勢の研究所職員が見守る中、総長と鈴木規夫所長により文化交流協定書に署名が交わされました。
 国立韓国伝統文化学校は、大統領府に基づいて伝統文化の保護・伝承を目的とする大学として設置され、文化財管理、造園、建築、美術工芸、考古、保存科学の6学科から成っています。今後、幅広い分野に渡っての総合的な交流が期待できます。

“オリジナル”研究通信(4)―加藤哲弘氏を囲んで

 企画情報部では今年12月に開催する国際シンポジウム「オリジナルの行方―文化財アーカイブ構築のために」に向けて準備を進めています。5月9日には、加藤哲弘氏(関西学院大学)をお招きして研究会を行いました。山梨絵美子の「美術研究所とサー・ロバート・ウィット・ライブラリー」と題する当所の成立と1920年代の西欧社会における美術史資料環境に関する発表、西洋美学の分野で「オリジナル」の問題がどのように語られてきたかについて加藤氏の「『オリジナル』であることをめぐって―美術研究に対するその意義」という発表の後、“オリジナル”をめぐってディスカッションがなされました。“オリジナル”であることが希求されるのは西洋でも19世紀以降であること、そうした時代を背景としながら19世紀末に活躍した美術史家アロイス・リーグルは必ずしも文化財の当初の姿のみに価値を見出さず経年的価値を認め、アーウィン・パノフスキーは複製が真正性(アウラ)を欠くことを指摘して文化財そのもの(オリジナル)と複製を区別したことなどが加藤氏によって指摘され、”オリジナル”の記録と記憶の質の違い、“オリジナル”を残す行為は何を伝えていくことか、などについて議論が交わされました。様々な角度から考え、議論を深めることにより、シンポジウムの充実を図るとともに、文化財に関する調査研究、資料の蓄積と公開という日常業務のあり方についても考える機会としたいと思います。

五姓田派としての満谷国四郎―美術研究所旧蔵デッサンより

満谷国四郎《人物》 東京国立博物館蔵

 満谷国四郎(1874~1936年)は明治・大正・昭和の三代にわたり、文展や帝展を舞台に活躍した洋画家として知られています。その没後の昭和13(1938)年に、当研究所の前身である美術研究所は満谷が残した素描類の寄贈を受けました。それらは明治期の“道路山水”とよばれる風景写生や、大正期に制作された展覧会出品作の下絵が多数を占めているのですが、その中で一点、鉛筆で入念に仕上げられた人物デッサンが異彩を放っています。細かな線描を交差させながらモティーフの肉付けを行うクロス・ハッチングの手法を用い、片目をすがめてこちらを見つめる表情は自意識にあふれています。満谷のみならず明治洋画史の上でも類例をみないものであったため、これまで紹介されることもなかったのですが、このたび神奈川県立歴史博物館の角田拓朗氏と岡山県立美術館の廣瀬就久氏が、明治初期洋画に多大な足跡を残した五姓田芳柳・義松一派の調査研究を進める中で、その流れに位置する可能性を指摘され、5月7日の企画情報部研究会で発表を行いました。デッサンの左下隅に記された明治25年2月21日という日付は、満谷が五姓田門下で学んでいたわずか一年ばかりの時期に当たります。このデッサンが五姓田派と満谷をつなぐ作として、さらには明治洋画史に一石を投じる作として位置づけられることになるかもしれません。本作品は、同じくクロス・ハッチングによる描写で満たされた写生帖とあわせて、「五姓田のすべて―近代絵画への架け橋」展(神奈川県立歴史博物館2008年8月9~31日、9月6~28日、岡山県立美術館2008年10月7日~11月9日)に出品される予定です。

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平成20年度の在外日本古美術品保存修復協力事業

 東京文化財研究所では、海外の美術館・博物館が所蔵する日本美術品の保存修復に協力するとともに対象作品を所蔵館と共同で保存修復に関する研究を行っています。
 平成20年度は、絵画4件『松に孔雀図屏風』(6曲1隻、カナダ、グレーター・ビクトリア美術館)、『星曼荼羅図』(1幅、カナダ、バンクーバー博物館)、『虫歌合絵巻』(1巻、イタリア、ローマ国立東洋美術館)、『遊女立姿図(宮川長春筆)』(1面、イタリア、キョッソーネ東洋美術館)、工芸4件『住吉蒔絵文台』(1基、イギリス、ヴィクトリア&アルバート美術館)、『花鳥紋章蒔絵盾』(1基、イギリス、アシュモリアン美術館)、『近江八景蒔絵香棚』(1対、チェコ、市立ヴェルケ・メディジ博物館)、『楼閣山水蒔絵箱』(1合、オーストリア、ウィーン国立工芸美術館、昨年度からの継続分)を対象にして日本国内で保存修復が行われます。また、ドイツ・ケルン東洋美術館に開設した海外修復工房においては『花樹鳥獣蒔絵螺鈿洋櫃』(3年継続の3年目)の保存修復が進行中です。さらに、本年度からベルリン・ドイツ技術博物館・紙の修復工房において、絵画1件『達磨図』(ケルン東洋美術館、2年継続)を対象として保存修復が行われます。この海外における修復工房では海外の修復関係者を対象にワークショップを併行して開催する予定です。

第30回国際研究集会「無形文化遺産の保護」報告書の英語版

グウェン・キム・ズン氏「近年のベトナムにおける無形文化遺産の保護」より

 2007年2月14から16日まで開催された第30回国際研究集会「無形文化遺産の保護 国際的協力と日本の役割」の報告書の英語版を、ホームページにアップしました。「無形文化遺産の保護に関する条約」が2006年4月に発効したことを受けて行われたシンポジウムです。ご覧になりたい方は、
http://www.tobunken.go.jp/~geino/e/kokusai/06ICHsympo.html
まで。  なお、日本語版は
http://www.tobunken.go.jp/~geino/kokusai/06ICHsympo.html
でご覧になれます。

「保存担当学芸員研修」開催に向けて

 全国の文化財保存施設において、資料保存を担当する職員を対象に、必要かつ基礎的な知識や技術を学んでいただくために毎年7月に開催している「保存担当学芸員研修」は今年度で一つの節目となる25回目を迎えます(7月14日から2週間の予定)。例年2月初旬までに開催要項を全国に配布しており、今年度は定員(25名)を大きく超える応募があったため、選考を行いました。選考にあたっては、この研修が初心者向けであるという観点から、ある程度保存施設における実務経験があり、受講後は勤務館のみではなく、長期にわたり地域における資料保存の核となっていただけるような人を重視しました。
 現在私たちは、7月の開催に向けて、プログラム作りや、外部講師の依頼、実習の内容精査、また実習機器のチェックなどを行っています。研修内容は、毎年の研修後に参加者からいただいたアンケート結果などを参考に毎年少しずつ改善しています。参加者は2週間もの間、職場を離れることになります。これは、参加者および勤務館の両者にとって大きな負担ですので、私たちにはこの研修が実践的に意義あるものであったと実感していただけるよう万全の準備を行い、開催に備えるよう心がけています。

平成19年度在外日本古美術品保存修復協力事業における修復作品の展示会について

東京国立博物館平成館特別展示室の展示

 保存修復科学センターでは、5月13日(火)から25日(日)まで、東京国立博物館平成館企画展示室において平成19年度在外日本古美術品保存修復協力事業において修復が終了した、屏風(6曲1双)2組、掛幅3幅及び漆工品2作品を展示しました。また、会場内には、絵画及び漆工品の修復過程を紹介したパネルも展示し修復作業の様子が分かるようにしました。いずれの作品も、所蔵館において展示可能な状態に修復されており、当研究所の国際貢献・協力を皆さんにご理解いただく良い機会となりました。今後もより一層の国際貢献・協力に寄与すべくこの在外日本古美術品保存修復協力事業を推し進めてまいります。

「中央アジアの岩絵遺跡の世界遺産への一括登録のためのユネスコ地域ワークショップ」への参加

 標記ワークショップは、平成20年5月26日から5月31日にかけて、中央アジアの一つであるキルギスタン共和国の首都ビシュケクで開催されたものです。トルクメニスタンを除く、キルギスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンの4ヶ国、及びユネスコ、イコモスが参加しており、当研究所の山内がオブザーバーとして参加しました。岩絵(もしくは岩画)は中央アジアのみならず、ユーラシア大陸に広く分布していますが、同ワークショップは中央アジアに地域を限定し、世界遺産として一括登録することを目的としています。会議では、多くの事例が紹介されるとともに、調査研究、登録作業、管理保存の問題点等が議論されました。また、国境を越えた遺産の一括登録の場合、各国での作業の進捗状況が異なり、世界遺産の申請書類の作成までには今後、さらに時間を要するものと思われます。同ワークショップでは2012年の世界遺産登録を目標に、今後も同種のワークショップを継続していくことが確認されました。文化遺産国際協力センターは、西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業の一環として、将来的な保存修復協力事業を念頭に、このようなワークショップに参加し、情報収集に努めるとともに、中央アジア諸国の関係者・関係当局との連携を図っていく予定です。

文化財情報の発信と連携についての研究協議会開催

美術図書館の横断検索サイト
“ALC(Art Libraries’ Consortium)”
連想検索サイト「想(Imagine)」

 企画情報部では、4月22日に、水谷長志(東京国立近代美術館)、丸川雄三(国立情報学研究所)の二氏を講師に招いて、上記のような研究協議会を開催しました。両氏は、現在それぞれ美術図書館の横断検索サイト“ALC(Art Libraries’ Consortium)”及び連想検索サイト「想(Imagine)」をWEB上で立ち上げて運営管理にあたられています。研究所全体、ならびにより質の高い文化財情報の発信を担当する当部では、将来的な展望にもとづいて討議しました。今後は、これまでの研究成果の蓄積のより効果的な発信にむけて事業活動を具体化していく予定です。

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黒田記念館研究室の公開

新たに公開をはじめた1階の旧研究室

 これまで黒田記念館では、2階の記念室、展示室の2室において黒田清輝作品を公開してきました。4月24日からは、2階、1階の旧研究室も一般公開をはじめました。2階の旧研究室では、「黒田清輝の生涯と芸術」(上映時間約12分)と題したスライドショーを上映し、来館者に黒田の芸術への理解を深めていただくようにしました。さらに1階の旧研究室2室では、美術研究所時代当時の木製机、キャビネット、写真カード等を展示し、あわせて東京文化財研究所の最新の成果刊行物を自由にご覧いただけるようにしました。これによって、黒田作品の鑑賞に加えて当研究所の歴史と現在を紹介できるようにしました。

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梅村豊撮影歌舞伎写真の整理

 梅村豊(1923・6・15―2007・6・5)氏は、雑誌『演劇界』のグラビア頁を長く担当されていた写真家です。昨年12月、無形文化遺産部は、故人の遺されたネガや写真の一部を、未亡人にあたられる宣子氏からご寄贈いただくことになりました。現在、凡その点数を把握するための整理をしています。今年度中には、正式に東京文化財研究所への寄贈手続きを完了したいと考えています。
 故人の写真が最初に『演劇界』に掲載されたのは昭和22年だったそうです。ご寄贈いただいたネガ・写真は、昭和37年頃に撮影されたものが最も古いようですが、それでも研究所に搬入する時点で、ダンボール箱で10数個に上る膨大なものでした。20世紀後半の歌舞伎を撮り続けてきた写真家の貴重な記録です。

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『保存科学』掲載記事のインターネット公開

 『保存科学』は、当研究所の研究員が行う文化財の保存と修復に関する自然科学的な研究成果や受託研究、また館内環境調査などの報告を掲載した雑誌です。1964年3月、当時の保存科学部長・関野克氏による「文化財保存科学研究概説」に始まる第1号の創刊以来約40年間、我々は先人の遺した貴重な文化財を将来の世代に伝えるという使命感を持って研究に携わり、その成果を公表し続けてきました。最新の第47号では、高松塚古墳や敦煌莫高窟壁画の保存・調査に関するものを始め、25本の報文・報告を掲載しています。
 冊子体の『保存科学』は非売品で、関係機関や大学などでの閲覧に限られていますが、どなたにも自由に触れていただくために、これまでのすべての記事を電子ファイル化(PDF版)して、インターネット(http://www.tobunken.go.jp/~ccr/pub/cosery_s/consery_s.html)からダウンロードできるようにしています。我々が一体どのような仕事をしているのか知っていただくためにも、多くの方にアクセスしていただければ幸いです。

建造物などに使用する漆塗装の耐候性向上に向けた屋外の暴露実験

暴露実験用の漆塗装手板試料の点検作業
大樹町航空公園内に据え付けた漆塗装の暴露試験台(左側)

 保存修復科学センターでは、「伝統的修復材料および合成樹脂に関する調査研究」プロジェクト研究の一つとして、建造物などに使用する漆塗装の耐候性向上に向けた基礎実験を昨年度より継続しています。4月17日から4月18日にかけて、北海道大樹町内航空公園内の屋外暴露実験台に据え付けた朱漆と黒漆の各種手板試料の劣化状態の経過観察を行ないました。今回の現地調査は8ヶ月目の点検であり、漆塗装の種類による劣化状態の違いがしだいに明確になってきました。暴露実験台をこの地点に設置した理由は、北海道大樹町内は全国でも晴天率が高いこと、気象データの入手がし易いこと、さらには寒暖の年較差が高いこと、などが理由です。なお、この屋外暴露実験による紫外線劣化の経過観察は、第一期として本年8月までの一年間を予定しています。

タジキスタン、アジナ・テパ仏教遺跡保存プロジェクト

調査によって明らかになったストゥーパのある中庭に面した南東の壁
タジク人専門家との共同作業の様子

 文化遺産国際協力センターは、4月16日から5月9日にかけて、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による「タジキスタン、アジナ・テパ仏教遺跡保存プロジェクト」の第3次ミッションを派遣しました。本プロジェクトの目的は、日干しレンガや練り土といった土構造物で構築された仏教寺院を保存することであり、文化遺産国際協力センターでは、過去の発掘調査以後に堆積した土砂や雑草を除去し、あわせて寺院本来の壁の位置や構造を明らかにする考古学的清掃や試掘調査を2006年より実施してきました。
 今回の調査では、ストゥーパ(仏塔)のある中庭に面した南東の壁を精査し、涅槃仏のあった部屋へとつづく入口を確認しました。また、遺跡の縁辺部2カ所で試掘調査をおこなったところ、それぞれで仏教寺院の外壁を検出することができ、仏教寺院本来の範囲を確認することができました。こうした成果は、遺跡を保存する際に重要な情報になります。なお、現地で実施されたすべての考古学調査は、タジク人の若手考古学者と共同で行われ、私たちが調査を実施する上で大きな助けとなりました。同時に、現地専門家の育成という点においても、意義のあるものになったと思われます。

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