研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


研究会の開催

 企画情報部では毎月、研究会を開催し、研究プロジェクトの進捗状況や成果の一端について研究発表を行っています。12月は26日(水曜日)3時から企画情報部研究会室において津田徹英が研究プロジェクト「美術の技法・材料に関する広領域的研究」の成果の一環として「平安末期の在地造像をめぐる小考」のタイトルで発表を行いました。これは、平安末期における「定朝様式」の地方受容に関して、その表現や技法に関して都鄙間で大差が認められないことの解釈をめぐって、これまで造像する側の仏師の技術論に収束しがちな問題を受容者サイドの問題として捉え直し、都鄙双方に活動基盤を持ち、双方を往還して活動を行った「地下官人」の存在に着目しつつ、かれらが在地造像の主体者となることで地方における文化レベルを引きあげ、中央作に準じた「みやび」な作風を示す在地造像がなし得たのではないかという仮説に基づき、その一端を造像当初の天蓋・光背・台座をよく残す滋賀県下の浄厳院阿弥陀如来像とその周辺作品に及びながら明らかにしようとした試論です。発表後、出席者から問題点の指摘など活発な意見交換がおこなわれました。

第2回無形文化遺産部公開学術講座「上方寄席囃子 林家トミの記録」

講演の様子

 無形文化遺産部主催の公開学術講座が、2007年12月12日、大阪の国立文楽劇場小ホールで開催されました。 開催地の大阪に相応しい題材をということで、昭和37年(1962)に記録作成等の措置を講ずべき無形文化財「上方寄席下座音楽」の関係技芸者に指名された林家トミ師(1883-1970)を取り上げました。当日のプログラムの詳細は、東京文化財研究所ホームページ
http://www.tobunken.go.jp/ich/public/lectures)をご覧下さい。
 公開学術講座は旧芸能部時代から通算すると38回目となりますが、会場が東京以外となったのは今回が初めてです。今後も各地での開催を積極的に計画して行きたいと考えています。

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第2回無形民俗文化財研究協議会

会議の様子

 東京文化財研究所芸能部では昨年度より、無形の民俗文化財の保護と継承に関わる諸問題について話し合う研究協議会を開催しております。その第2回を、「市町村合併と無形民俗文化財の保護」をテーマとして、2007年12月7日に当研究所セミナー室において開催しました。様々な文化財の中でも、地域のなかで伝承され、保護が図られる民俗文化財は、合併の影響をとくに大きく受ける分野です。当日は、近年合併を経験した市町村、およびこれまでに合併を経験しながらそれを無形民俗文化財の保護に活かしてきた市町村から、保存会活動の組織化や学校教育との連携などについて報告があり、それをもとに総合討議がなされました。この協議会の内容は、2008年3月に報告書として刊行される予定です。

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高校生の所内見学

 当研究所には、国内外から様々な方が施設見学に訪れます。最近は、中学校や高校からの見学も増えています。12月には品川女子学院高等部と島根県立益田高校からそれぞれ約20人の高校生がやってきました。保存修復センターの旧保存科学部門では、犬塚研究員が高松塚古墳墳丘の冷却方法を検討するために行った石材や土の物性測定や温度変化のシミュレーションなどの話をしました。また、吉田は文化財の彩色に使われる色材の種類を触らずに分析する方法である蛍光X線法と、実際にこれを用いて行った絵画の色材分析についてパネルを使って説明しました。応用科学的な内容ですので、高校生にはやや難しかったかも知れませんが、若い人の「理科離れ」が問題となっているなかで、彼らが今習っている物理や化学、また生物などがこのような分野で活かされているということが分かっていただければ幸いです。

江袋教会の焼損調査と修復指導

長崎県新上五島町にある江袋教会 焼損前
長崎県新上五島町にある江袋教会 焼損後
焼損したステンドグラス

 長崎県教育委員会の要請により、新上五島町にあり、昨年2月に焼損した江袋教会の現地調査及び修復方針及び方法に関して指導を実施しました。江袋教会は明治15年(1882年)に建立された、木造瓦葺き平家建てで、長崎県内では最古と思われる木造教会であり、海を見下ろす急傾斜の山腹に建てられていました。屋根は単層構成、変形寄棟作りで構造的にも貴重なものとされていました。それが昨年(2007年)2月に漏電が原因で焼損しました。焼損したものの、立て替えてしまうよりは、使える部材は少しでも救いたいという地元の信者の皆様の願いにより、東京文化財研究所保存修復科学センターでは、現地の調査を実施し、比較的焼損の程度が軽い部材に関して、樹脂含浸を施し、利用できるようにするなどの修復指導を実施しました。

シルクロード沿線人材育成プログラム「紙の文化財」研修コース終了

侯菊坤人事労働司長が研修生の成果物を視察
修了式記念撮影

 中国文物研究所(北京)での人材育成プログラム「紙の文化財」研修コースは、3カ月間の日程を無事に終了しました。この間、日本からは計12名の専門家が196時間にわたって講師を担当しましたが、とくに最後の4週間は国宝修理装こう師連盟の技術者2人が中国側の専門家とともに授業を行い、研修生たちは短期間ながら冊子、軸装物の修復技術を習得しました。12月27日には中国国家文物局の侯菊坤人事労働司長が出席して修了式が行われ、シルクロード沿線6省から参加した12名の研修生に東京文化財研究所と中国文物研究所連名の修了証が授与されました。同プログラムは、来年度5年計画の3年目を迎え、春に古建築コース、秋には土遺跡コースを実施する予定です。

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石造文化財の保護に関する中国人専門家の来日研修

樹脂処理の実験

 東京文化財研究所が参加している陝西唐代陵墓石刻保護修復事業とユネスコ/日本信託基金龍門石窟保護修復事業は、いずれも2008年に最終年を迎えようとしています。ともに石灰岩という共通した材料の文化財を対象とするものであるため、これまでも研究会の開催や現地調査、日本での研修に両事業のメンバーを積極的に合流させてきました。今回は11月19日から12月16日の日程で、西安文物保護修復センターと龍門石窟研究院の保存修復部門の専門家各2名を日本に招へいし、石質文化財の修理技術、撥水材料を塗布した後の効果の評価方法、修理作業終了後の環境のモニタリングなどについて研修を行いました。最終年度の修復作業実施に向けて、研修の成果が期待されます。

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第21回国際文化財保存修復研究会の開催

会議風景

 2007年12月6日に、93名の参加を得て、第21回国際文化財保存修復研究会「保存処置後のモニタリング」を開催しました。国士舘大学の西浦忠輝教授による「遺跡保存におけるモニタリングの重要性とその問題点」、インドネシア・ボロブドゥール遺産保存研究所のナハール・チャヤンダル氏による「ボロブドゥール遺跡の修復後のモニタリング」、韓国国立文化財研究所の金思悳氏による「石窟庵の長期的保存方案」の3件の発表と、総合討議が行われました。それぞれの遺跡における様々なモニタリング方法が紹介され、参加者の間で情報が共有されましたが、それを他の遺跡にも導入するためには、さらに広くモニタリングの重要性を訴えていく必要があることが認識されました。

イラク人保存修復専門家の研修事業(3)

X線写真の説明を受ける研修生(奈良文化財研究所)

 3ヶ月間のイラク人保存修復専門家の研修事業は、平成19年12月12日に終了しました。研修生は、11月13・14日に(財)埼玉県埋蔵文化財調査事業団を訪問し、保存修復の研究室や展示室、収蔵庫などの見学を行うとともに、土器の修復を体験しました。その後、11月19日から12月3日まで、奈良文化財研究所において、X線透過撮影機器など、保存修復に用いられるさまざまな機器の使用に関する研修を受けました。12月10日には東京文化財研究所のセミナー室において、「イラク・アフガニスタンの文化財保存の現状」というタイトルで、イラク国立博物館や地方の博物館の状況、博物館保存研究室での活動とあわせて、今回の研修成果を報告しました。今後、4名の研修生が、日本での研修の成果を生かし、イラクの文化財の保存に貢献してゆくことを願っています。

中国・甘粛省文物考古研究所、甘粛省博物館職員来訪

分析科学研究室にてセンター長より説明を受ける来訪者

 11月6日に中国・甘粛省文物考古研究所及び甘粛省博物館職員が、秋田県立博物館の招聘に伴い、東京文化財研究所の施設見学のため来所しました。一行は、保存修復科学センター長から研究所の概要についての説明を受けた後、保存修復科学センターの分析科学室及び1階ホールの企画展示の見学、文化遺産国際協力センター長との意見交換を行いました。

久野健氏資料の寄贈受け入れ

 今年7月、87歳で逝去された当所名誉研究員の久野健氏のご遺族より、久野氏の調査による写真資料と調書をご寄贈くださるとのお話があり、11月7日に当所への輸送を行いました。久野氏は日本彫刻史を研究され、精力的に現地調査に赴かれ、その成果は京阪神のみならず東北や関東など各地域の仏像を編集した『仏像集成』(学生社)、『日本仏像彫刻史の研究』(吉川弘文館)など多数の著書によって公になっています。その背景となった写真はB4、4段ファイル6本分、調書は300冊を超えます。これらのリストを整え、公開すべく、整理を進めていく予定です。

特集陳列 黒田記念館―黒田清輝の作品Ⅱ

黒田記念館-黒田清輝の作品Ⅱ
特集陳列の様子

 今年4月に独立行政法人国立文化財機構に組織が改まったことを記念して、黒田記念館所蔵の作品を東京国立博物館平成館で展観する第二回目の特集陳列が、11月6日(火)から12月2日(日)まで行われました。今回は、黒田が留学中に好んで訪れたパリ近郊の農村グレー=シュル=ロアン(Grez=sur=Loing)滞在中の作品と、1891年10月号の「フィガロ・イリュストレ」(Figaro Illustre)に掲載されたピエール・ロティ(Pierre Loti 1850-1923)によるエッセイ「日本婦人」のための挿図原画「日本風俗絵」(Japanese Genre Scenes)4点を中心に、22点の作品を展示しました。「フィガロ・イリュストレ」1891年10月号と「日本風俗絵」を同時に展示されたのは初めてで、黒田がフランスにもたらした日本イメージを具体的に知る機会となりました。

第41回オープンレクチャー

11月2日、江村が「光琳の目と手」と題する発表を行いました。
11月3日、山梨が「矢代幸雄と美術研究所」と題する発表を行いました。
山梨は近代日本洋画の父と仰がれた黒田清輝とその作品についても語りました。
近代日本洋画の父黒田清輝は美術研究所設立の立役者でもありました。
11月3日、荒屋鋪透氏は「黒田清輝の+体験 -芸術家村グレーから黒田記念館へ」と題する発表を行いました。

 当所では、美術史の研究成果を広く知って頂くための活動の一環として、毎年秋に1回2日間にわたってオープンレクチャーを開催しております。昨年までは美術部の主催でしたが、機構改革に伴い本年より企画情報部が受け継ぎ、今年で41回を数えることとなりました。
 本年は、11月2日(金)には、江村知子「光琳の目と手」、中部義隆(大和文華館)「矢代幸雄の琳派観」と題し、近世絵画、とりわけ国際的にも評価の高い琳派を中心に研究発表が行われました。江村は、江戸時代における尾形光琳の芸術性を、主に「四季草花図」(津軽家旧蔵・個人蔵)という彼の作品を通して同時代の視点で探究しました。また中部氏は、近代に至って琳派作品がどのように見出され、評価されていったのかを、矢代幸雄という日本における美術史学草創期の研究者の目を通して跡づけられました。
 11月3日(土)は、山梨絵美子「矢代幸雄と美術研究所」、荒屋鋪透(ポーラ美術館)「黒田清輝の+体験 -芸術家村グレーから黒田記念館へ」という2名の講師による近代美術史に関わる研究発表が行われました。山梨は、当研究所の前身、昭和5年に設立された美術研究所の初代所長でもあった矢代幸雄が構想した美術研究所の具体像を考察しました。また荒屋鋪氏は、日本の美術制度の形成に大きな役割を果たし、美術研究所設立の立役者でもあった黒田清輝が、フランス留学、とりわけパリ近郊のグレー村における芸術体験から得たものを具体的に示されました。
 いわゆる文化財に対する関心は、年々高まっているようです。今後も、よりいっそう美術研究を進展させ、作品の持つ豊かさを多くの人に伝えていきたいと思います。

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特集陳列「写された黒田清輝」

「黒田清輝ポートレート」
撮影年不詳 20.5×15.3cm

 11月15日より、黒田記念館の二階展示室において「写された黒田清輝」と題する特集陳列が開かれました。これは平成18年度に、黒田清輝夫人照子のご遺族にあたられる金子光雄氏より、東京文化財研究所に寄贈された写真等208件の資料の一部を公開するものです。資料の大半は、黒田清輝の暮らしぶりを知るポートレートなどですが、これまで未公開の写真もあり、黒田清輝という画家をより深く理解するための貴重な資料です。そのうちから、今回は比較的大判の写真23点を選び公開します。寄贈写真はすでに原板が失われており、いずれもオリジナルな焼付写真であるため、公開にあたりましては、オリジナル写真の風合いを保ちつつ、原寸大に再現した画像を展示いたします。これは、写真資料の保存公開という目的のもとにすすめられたデジタル画像形成技術の開発研究の成果の一部でもあります。(会期:07年11月15日-08年5月17日)

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“オリジナル”研究通信(2)―オーセンティシティー(Authenticity)の在り処

奈良、新薬師寺本堂(奈良時代に建立)の明治修理以前の姿と現在の様子。
明治30(1897)年の修復により、鎌倉時代に付加された下屋状の礼堂が取り払われ、復原をめぐる論議を呼びました。

 企画情報部では来年度の「文化財の保存に関する国際研究集会」への準備として、“オリジナル”をテーマに部内研究会を開いています。11月はとくに建築学を視野に、文化遺産国際協力センターの稲葉信子(14日)、清水真一(21日)を交えて討議を行いました。屋内で大事に保存される絵画や彫刻と異なり、建築物は風雨にさらされ、また住居や施設として日々使用される必要上、度重なる修理や改築を余儀なくされるものです。しかもそうした建築の可変的な性格にくわえて、木造や石造といった材質の違いによって維持のしかたも異なるため、各材質に根ざした文化圏のあいだで自ずと保存修復の理念に差が生じることになります。建築物のどの時代の姿を、どのような部材を用いて文化財として後世へ伝えていくのか、オーセンティシティー(Authenticity 真実性)の在り処をめぐる議論は尽きることがないようです。

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在外日本古美術品保存修復協力事業に関する絵画作品の中間視察

 在外日本古美術品保存修復事業における絵画部門は、海外の美術館・博物館で所蔵されている日本美術品を日本に一旦持ち帰って修復を行っています。例年、10月から11月にかけて各所蔵館の担当者の来日のもと、修復の進捗状況の確認と新調の表装裂選定等をこの時期に行っています。今年度の修復作品5件のうち、キンベル美術館(アメリカ)蔵『多武峯維摩会本尊図』について同館学芸員ジェニファー・プライス氏が10月16日に、オーストラリア国立美術館蔵『釈迦十六善神像』について同館主任修復師アンドレア・ワイズ氏が10月26日に、ヒューストン美術館(アメリカ)蔵『日吉山王祭礼図屏風』について同館保存修復部長ウィン・ペラン氏と修復助手ティナ・タン氏が11月13日に、それぞれを修復している工房に企画情報部のそれぞれの担当者とともに訪れ、修復の進捗状況を確認するとともに、表装裂の選定等を行いました。これらの作品はいずれも明年3月下旬に修復が完了し、運営委員会でのお披露目を経て、5月には東京国立博物館で公開を行う予定です。

「彦根屏風」修復後の調査撮影

 「国宝紙本金地着色風俗図(彦根屏風)」(彦根城博物館蔵)は、二ヵ年をかけた本格的な修理が完了し、「よみがえった国宝・彦根屏風と湖東焼の精華」展(9月28日~10月26日)においてお披露目の展示が行われました。当所では昨年度の修理前から、彦根城博物館と共同で「彦根屏風」の調査研究を実施しています。そしてこの展覧会終了後に、屏風装に改められた状態を撮影し、修理を経て安定した表面の状態を高精細画像および近赤外線画像によって調査・記録しました。現在、その成果をまとめた報告書が編集作業の最終段階を迎えています。今回の調査研究で得られた新知見は、近世風俗画の優品として高く評価されてきた「彦根屏風」の研究のみならず、日本絵画史研究全体においても、有効な資料となることが期待されます。この報告書は今年度末刊行予定です。

人形浄瑠璃文楽の囃子に関する聞取り調査

 無形文化遺産部では、プロジェクト研究「無形文化財の保存・活用に関する調査研究」の一環として、11月12日に国立文楽劇場(大阪)楽屋で、昭和38年以降、文楽の囃子を引受けてきた望月太明藏(もちづきたぬぞう)社中の、藤舎秀左久(とうしゃしゅうさく)師と望月太明吉(もちづきたぬきち)師の聞取り調査をおこないました。秀左久師は主として笛を、太明吉氏は笛以外の鳴物を担当される社中のベテランで、文楽を陰で支える重要な役割を担いながら、これまであまり注目されていなかった囃子について、その移り変わり、修業のありさまなど興味深いお話を、公演中のお忙しい中にも関わらず、丁寧にしていただきました。

研究会「木質文化財の劣化診断」

 保存修復科学センターでは、文化財の生物劣化対策の研究の一環として、平成19年11月19日、研究所セミナー室において表記の研究会を行いました。今回は「文化財建造物の劣化診断と維持管理 –診断例とその対策、今後期待される技術-」と題して、京都大学の藤井義久氏から、広い範囲の最新の診断技術と実例についてわかりやすくお話をいただきました。また、九州国立博物館の鳥越俊行氏からは、「木彫像内部の生物被害を見る -文化財用X線CTによる非破壊劣化診断-」として、CTが木彫像などの虫による被害の検出を含むさまざまな情報を得る強力な手段であることを、カナダ保存研究所のTom Strang氏より、「温度処理による殺虫処理のポリシーと、木質文化財に与える影響の科学的評価」についてお話いただきました。(参加者60名)

韓国南東部における共同調査―日韓共同研究

感恩寺三層石塔の保存修復工事現場

 東京文化財研究所では、石造文化財を対象とした環境汚染の影響と修復技術の開発研究について、大韓民国・国立文化財研究所と共同研究を進めています。今回は、森井順之・張大石(東北芸術工科大学)の2名が、11月20日から24日までの5日間、韓国南東部(慶州・大邱)の石塔や石仏などを対象に、石造文化財保存修復の現状を調査しました。
 慶州では感恩寺三層石塔(国宝)などの石塔の調査を実施しました。感恩寺三層石塔は韓国では珍しく凝灰岩製の石塔ですが、風化による損傷が多く見られ、国立文化財研究所の直轄で解体修理が行われております。今回は修復現場を訪問し、韓国側研究者と修復材料や技法に関する議論を行いました。また、翌日は大邱に移動し第二石窟庵(国宝)などを訪問しました。崖地に仏龕を掘り花崗岩製の仏像彫刻を安置していますが、仏龕内部における漏水や仏像彫刻表面の層状剥離など劣化機構の解明や、将来の保存修復方案について今後議論を行うこととなりました。
 また、23日には国立公州大学校で開催された「石造文化財の保存に関する国際研究集会」に参加し、東京文化財研究所が国宝及び特別史跡・臼杵磨崖仏において実施している調査について講演を行いました。講演後は、多くの研究者から質問や助言を頂戴し、今後の参考となりました。

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