研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


平成19年度在外日本古美術品保存修復協力事業における修復作品の展示会について

東京国立博物館平成館特別展示室の展示

 保存修復科学センターでは、5月13日(火)から25日(日)まで、東京国立博物館平成館企画展示室において平成19年度在外日本古美術品保存修復協力事業において修復が終了した、屏風(6曲1双)2組、掛幅3幅及び漆工品2作品を展示しました。また、会場内には、絵画及び漆工品の修復過程を紹介したパネルも展示し修復作業の様子が分かるようにしました。いずれの作品も、所蔵館において展示可能な状態に修復されており、当研究所の国際貢献・協力を皆さんにご理解いただく良い機会となりました。今後もより一層の国際貢献・協力に寄与すべくこの在外日本古美術品保存修復協力事業を推し進めてまいります。

「中央アジアの岩絵遺跡の世界遺産への一括登録のためのユネスコ地域ワークショップ」への参加

 標記ワークショップは、平成20年5月26日から5月31日にかけて、中央アジアの一つであるキルギスタン共和国の首都ビシュケクで開催されたものです。トルクメニスタンを除く、キルギスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンの4ヶ国、及びユネスコ、イコモスが参加しており、当研究所の山内がオブザーバーとして参加しました。岩絵(もしくは岩画)は中央アジアのみならず、ユーラシア大陸に広く分布していますが、同ワークショップは中央アジアに地域を限定し、世界遺産として一括登録することを目的としています。会議では、多くの事例が紹介されるとともに、調査研究、登録作業、管理保存の問題点等が議論されました。また、国境を越えた遺産の一括登録の場合、各国での作業の進捗状況が異なり、世界遺産の申請書類の作成までには今後、さらに時間を要するものと思われます。同ワークショップでは2012年の世界遺産登録を目標に、今後も同種のワークショップを継続していくことが確認されました。文化遺産国際協力センターは、西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業の一環として、将来的な保存修復協力事業を念頭に、このようなワークショップに参加し、情報収集に努めるとともに、中央アジア諸国の関係者・関係当局との連携を図っていく予定です。

文化財情報の発信と連携についての研究協議会開催

美術図書館の横断検索サイト
“ALC(Art Libraries’ Consortium)”
連想検索サイト「想(Imagine)」

 企画情報部では、4月22日に、水谷長志(東京国立近代美術館)、丸川雄三(国立情報学研究所)の二氏を講師に招いて、上記のような研究協議会を開催しました。両氏は、現在それぞれ美術図書館の横断検索サイト“ALC(Art Libraries’ Consortium)”及び連想検索サイト「想(Imagine)」をWEB上で立ち上げて運営管理にあたられています。研究所全体、ならびにより質の高い文化財情報の発信を担当する当部では、将来的な展望にもとづいて討議しました。今後は、これまでの研究成果の蓄積のより効果的な発信にむけて事業活動を具体化していく予定です。

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黒田記念館研究室の公開

新たに公開をはじめた1階の旧研究室

 これまで黒田記念館では、2階の記念室、展示室の2室において黒田清輝作品を公開してきました。4月24日からは、2階、1階の旧研究室も一般公開をはじめました。2階の旧研究室では、「黒田清輝の生涯と芸術」(上映時間約12分)と題したスライドショーを上映し、来館者に黒田の芸術への理解を深めていただくようにしました。さらに1階の旧研究室2室では、美術研究所時代当時の木製机、キャビネット、写真カード等を展示し、あわせて東京文化財研究所の最新の成果刊行物を自由にご覧いただけるようにしました。これによって、黒田作品の鑑賞に加えて当研究所の歴史と現在を紹介できるようにしました。

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梅村豊撮影歌舞伎写真の整理

 梅村豊(1923・6・15―2007・6・5)氏は、雑誌『演劇界』のグラビア頁を長く担当されていた写真家です。昨年12月、無形文化遺産部は、故人の遺されたネガや写真の一部を、未亡人にあたられる宣子氏からご寄贈いただくことになりました。現在、凡その点数を把握するための整理をしています。今年度中には、正式に東京文化財研究所への寄贈手続きを完了したいと考えています。
 故人の写真が最初に『演劇界』に掲載されたのは昭和22年だったそうです。ご寄贈いただいたネガ・写真は、昭和37年頃に撮影されたものが最も古いようですが、それでも研究所に搬入する時点で、ダンボール箱で10数個に上る膨大なものでした。20世紀後半の歌舞伎を撮り続けてきた写真家の貴重な記録です。

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『保存科学』掲載記事のインターネット公開

 『保存科学』は、当研究所の研究員が行う文化財の保存と修復に関する自然科学的な研究成果や受託研究、また館内環境調査などの報告を掲載した雑誌です。1964年3月、当時の保存科学部長・関野克氏による「文化財保存科学研究概説」に始まる第1号の創刊以来約40年間、我々は先人の遺した貴重な文化財を将来の世代に伝えるという使命感を持って研究に携わり、その成果を公表し続けてきました。最新の第47号では、高松塚古墳や敦煌莫高窟壁画の保存・調査に関するものを始め、25本の報文・報告を掲載しています。
 冊子体の『保存科学』は非売品で、関係機関や大学などでの閲覧に限られていますが、どなたにも自由に触れていただくために、これまでのすべての記事を電子ファイル化(PDF版)して、インターネット(http://www.tobunken.go.jp/~ccr/pub/cosery_s/consery_s.html)からダウンロードできるようにしています。我々が一体どのような仕事をしているのか知っていただくためにも、多くの方にアクセスしていただければ幸いです。

建造物などに使用する漆塗装の耐候性向上に向けた屋外の暴露実験

暴露実験用の漆塗装手板試料の点検作業
大樹町航空公園内に据え付けた漆塗装の暴露試験台(左側)

 保存修復科学センターでは、「伝統的修復材料および合成樹脂に関する調査研究」プロジェクト研究の一つとして、建造物などに使用する漆塗装の耐候性向上に向けた基礎実験を昨年度より継続しています。4月17日から4月18日にかけて、北海道大樹町内航空公園内の屋外暴露実験台に据え付けた朱漆と黒漆の各種手板試料の劣化状態の経過観察を行ないました。今回の現地調査は8ヶ月目の点検であり、漆塗装の種類による劣化状態の違いがしだいに明確になってきました。暴露実験台をこの地点に設置した理由は、北海道大樹町内は全国でも晴天率が高いこと、気象データの入手がし易いこと、さらには寒暖の年較差が高いこと、などが理由です。なお、この屋外暴露実験による紫外線劣化の経過観察は、第一期として本年8月までの一年間を予定しています。

タジキスタン、アジナ・テパ仏教遺跡保存プロジェクト

調査によって明らかになったストゥーパのある中庭に面した南東の壁
タジク人専門家との共同作業の様子

 文化遺産国際協力センターは、4月16日から5月9日にかけて、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金による「タジキスタン、アジナ・テパ仏教遺跡保存プロジェクト」の第3次ミッションを派遣しました。本プロジェクトの目的は、日干しレンガや練り土といった土構造物で構築された仏教寺院を保存することであり、文化遺産国際協力センターでは、過去の発掘調査以後に堆積した土砂や雑草を除去し、あわせて寺院本来の壁の位置や構造を明らかにする考古学的清掃や試掘調査を2006年より実施してきました。
 今回の調査では、ストゥーパ(仏塔)のある中庭に面した南東の壁を精査し、涅槃仏のあった部屋へとつづく入口を確認しました。また、遺跡の縁辺部2カ所で試掘調査をおこなったところ、それぞれで仏教寺院の外壁を検出することができ、仏教寺院本来の範囲を確認することができました。こうした成果は、遺跡を保存する際に重要な情報になります。なお、現地で実施されたすべての考古学調査は、タジク人の若手考古学者と共同で行われ、私たちが調査を実施する上で大きな助けとなりました。同時に、現地専門家の育成という点においても、意義のあるものになったと思われます。

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シルクロード沿線人材育成プログラム

岡田文男講師(京都造形芸術大学)による授業
中内康雄講師(文化財建造物保存技術協会)による授業

 中国文化遺産研究院(2008年2月に中国文物研究所を改組して名称変更)と共同で実施する「シルクロード沿線文化財保存修復人材育成プログラム」は3年目を迎えました。今年は、春から3ヶ月間半、古建築保護修復班(2年改革の第1年目)を実施し、秋から2ヶ月間、土遺跡保存修復班(3年計画の第3年目)を実施する予定です。折しも今年は8月8日からの北京オリンピックを控え、その日程を避けるため、例年よりも早めの4月3日に春のコースがスタートしました。古建築コースは、新疆・甘粛・青海・寧夏・陝西・河南の各省から合計12名の研修生が参加し、1年目に理論講座と各種調査の実習、保護修復計画の作成を研修し、2年目に参加する修復実習作業のための基礎を身につけることを目的にしています。その1年目の現場実習の場所には、故宮博物院の支援を得て、故宮内部の頤和軒東側の一角が提供されています。3カ月半の期間中、日本側講師10名が参加し、中国側講師とともに指導にあたります。

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『東京文化財研究所七十五年史 資料編』刊行

『東京文化財研究所七十五年史 資料編』

 当研究所の前身である帝国美術院附属美術研究所が設立された1930年から2005年までの75年の足跡を資料で跡づける『東京文化財研究所七十五年史 資料編』が3月末に刊行されました。戦前期の美術品調査の目録、矢代幸雄収集西洋美術関係図版目録、和田新、尾高鮮之助らによるインド・西アジアの美術調査撮影写真目録など美術研究所時代に蓄積された資料の記録、戦後、保存科学や無形文化財の分野を含む文化財の総合的調査研究機関となった後の研究課題や研究会・講座の一覧、当研究所各部の定期刊行物である『美術研究』『保存科学』『芸能の科学』の総目次など、それぞれの分野での研究史を跡づけるために一助となる資料集となっています。本書は中央公論美術出版から同じ書名で市販もされる予定です。

エントランスロビー 「洛中洛外図屏風の修理」パネル展示

ロビーパネル展示風景(撮影:鳥光美佳子)

 当所では、事業や研究成果を来所者の皆さんにご理解いただくために、エントランスロビーを利用して、定期的にパネル展示を行っております。このたび平成18年度に在外日本古美術品保存修復協力事業で修理を行った洛中洛外図屏風(ロイヤル・オンタリオ美術館蔵)を取り上げ、修理の工程とともに、美術史研究の成果をご紹介しております。洛中洛外図屏風は100点ほどの作例が確認できますが、この屏風は左右に二条城と方広寺大仏殿を大きく表す構図で表され、17世紀中頃の制作と考えられます。画中には総勢1,300人を超える人物が細密な表現で描かれ、社寺や名所の名を記した付箋が77枚も具備していることからも美術史研究上、貴重な作品です。この展示を通じ、我が国の文化による国際貢献・協力の一端をご理解いただければ幸いです。
http://www.tobunken.go.jp/~joho/japanese/project/panel/rakutyurakugai.html

東京文化財研究所七十五年史編纂のための聞き取り調査

 当研究所では『東京文化財研究所七十五年史 資料編』に続き、平成21年に沿革・調査研究の歴史を跡づける本編を刊行することを目指して編纂を進めています。本書には旧職員の略歴を掲載する予定で、その履歴や関連資料についての調査を行っています。3月には1930年代なかばから1942年まで美術研究所職員として東洋美術文献目録編纂にたずさわった豊岡益人氏のご遺族をお訪ねし、聞き取り調査を行いました。当研究所在職以外の履歴やご業績、同僚であられた旧職員についての情報が得られ、戦前の研究所の新たな一面が明らかになりました。文化財の調査研究に尽力した人々については、十分な調査がなされていないのが現状です。当研究所の七十五年史本編が文化財研究史の一端に寄与するものになるよう、今後とも努めていきたいと思います。

田中一松資料の寄贈

 1952年から65年まで当研究所所長をつとめた美術史家田中一松(1895-1983)氏の調書、収集写真等の資料が、ご遺族である田中一水氏および出光美術館さまから3月に寄贈されました。田中氏は戦前から多数の美術品を調査し、自らその記録画を付した丹念な調書を残されています。中には先の大戦中に失われた作品の調書もあり、大変貴重な資料です。これらの資料は田中氏逝去の後、ゆかりのあった出光美術館に保管されていましたが、このたび、より広い公開・活用のために、と当研究所にいただくことになりました。今後は、当研究所の所蔵資料と同様に整理・公開していく方針です。

イギリスにおける文化財情報の蓄積と公開についての調査

ウィット・ライブラリー ゲストブック 1924年1月18日
ウィット・ライブラリー バーバラ・トンプソン氏のオフィスにて

 2008年3月3日から6日間の日程で、山梨絵美子、江村知子、中村節子の3名で、イギリスにおける美術図書館、研究機関を訪問し、資料の収集と公開のありかたについて調査を行いました。限られた日程でしたが、セインズベリー日本芸術研究所、ロンドン大学コートールド美術研究所ウィット・ライブラリー、大英博物館、大英図書館、ヴィクトリア&アルバート美術館ナショナル・アート・ライブラリー、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)の6ヶ所を訪問、施設の調査とともに、各所の研究者と意見交換を行いました。なかでもウィット・ライブラリーは、研究所初代所長矢代幸雄が自らの美術史研究にとってひじょうに有益であったという体験から、日本でもこうした美術資料図書館が必要であるとして研究所の構想を得たという、当所にとっては縁の深い施設です。同所のゲストブックによると、1924から28年の間に9回に渡って矢代が訪問したことが判明し、研究所創設当時の事情を把握するとともに、文化財情報の整理・蓄積・公開においての課題を認識しました。今後も研究交流を行い、資料の利活用と閲覧室の運営とに活かしていきたいと考える次第です。

『国宝 彦根屏風』報告書刊行

『国宝 彦根屏風』報告書

 平成18~19年度にかけて彦根城博物館と共同で行った「彦根屏風」の調査研究についての報告書がこのたび無事刊行のはこびとなりました。この作品は本格的な修理が行われ、額装から屏風の形に改装されました。報告書では修理前・後の写真のほか、高精細画像、近赤外線画像、蛍光画像を多数盛り込みました。絵具層の下に存在する色名の指示書きの近赤外線画像と実際のカラー画像を対比させ、蛍光X線分析データとその計測箇所の高精細画像を対応させるなど、作品のもつ情報をできる限り提示することに関係者一同努めました。作品研究の基礎資料として末永く利用して頂けることを願っております。本書は中央公論美術出版から市販されます。
http://www.chukobi.co.jp/products/detail.php?product_id=336

『美術研究作品資料 第5冊 黒田清輝《湖畔》』の刊行

『美術研究作品資料 第5冊 黒田清輝《湖畔》』の原寸大部分図
巻末「《湖畔》をめぐる言葉とイメージ」より

 湖畔にたたずむ浴衣姿の女性を描いた黒田清輝の油彩画《湖畔》(明治30年作)は、数ある日本の美術品の中でもとくに親しまれた、人気の高い作品といってよいでしょう。このたび当研究所企画情報部では、この黒田の代表作にさまざまな視点から迫った『美術研究作品資料 第5冊 黒田清輝《湖畔》』を刊行しました。巻頭の城野誠治・鳥光美佳子(東京文化財研究所)による《湖畔》の画像は、原寸大部分図やふだん見ることのできない絵の裏側の画像もふくまれ、見なれた作品でありながら新鮮さを覚えます。荒屋鋪透氏(ポーラ美術館)・植野健造氏(石橋美術館)・金子一夫氏(茨城大学)・鈴木康弘氏(箱根町教育委員会)・渡邉一郎氏(修復研究所21)・田中淳・山梨絵美子(東京文化財研究所)によるテキストは、《湖畔》のモデルや制作地にはじまり、日本美術や西洋美術における位置、そして今日にいたる評価の変遷、作品のコンディションといったテーマで各々語られています。巻末には《湖畔》にまつわるイメージや言葉を収集し、昭和42年に発行された記念切手や《湖畔》によせた詩などを掲載しました。まさにその成り立ちから現在までの《湖畔》が歩んだ“生涯”をうかがえる一冊です。本書は中央公論美術出版より市販されています。
http://www.chukobi.co.jp/products/detail.php?product_id=121

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サンフランシスコ・アジア美術館における仏像調査

帝釈天像頭部X線写真
(サンフランシスコアジア美術館)

 企画情報部の津田と皿井は、美術の技法・材料に関する研究の一環として、平成20年3月10日から12日までの3日間、サンフランシスコ・アジア美術館において、日本の奈良時代につくられた仏像二像(梵天・帝釈天像)の調査と関連資料の収集を行いました。これらの像は、もともと奈良の興福寺にありましたが、明治時代の終わり頃に民間に流出し、その後アメリカのコレクターによって購入されたものです。
 これらは、奈良時代にしかみられない脱活乾漆技法という、特殊な技法で造られています。外形は、漆と麻布で張り子状になっており、中は補強のための心木が入れられているほかは空洞となっています。高価な漆が大量に必要であったり、構造的にも脆弱であったりするため、現在に伝わっている脱活乾漆技法の作品は少なく、これらはきわめて貴重な遺品と言えます。興福寺の阿修羅像も同じ技法でつくられたものです。
 明治38年頃に興福寺で撮影された写真には、多くの破損仏にまじってやはり大破したこの二像が写されています。アジア美術館の持つ関連資料の中にX線透過画像などを見出しましたが、それによって修理の状況などの手がかりを得ることができました。たとえば、明治の写真には梵天の頭部は無くなっていましたが、梵天像のX線透過画像をみると、その頭部は意外にも制作当初のものである可能性のあることがわかりました。本調査で得た知見を、さらに多角的に検証していく必要があります。今後、アジア美術館の協力を得て、これら脱活乾漆像の技法や様式などの解明をすすめたいと思います。

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来訪研究員による研究発表

研究所における呉景欣氏

 平成19年9月より1年間企画情報部に来訪研究員となった呉景欣氏(台北市出身、UCLA大学院博士課程在学)は、来日後の調査研究の成果を、3月26日に部内研究会にて発表しました。同研究員のテーマは、1920年代を中心として日本の近代美術が、どのようにヨーロッパ美術を受容したのかを研究テーマとしています。当日は、「古典か前衛か、キリスト教か仏教か―1920年代の古賀春江の宗教的なテーマの絵画」と題し、古賀春江が宗教的な主題、モチーフを扱った作品をとりあげ、当時のエル・グレコ等の古典から近代までのヨーロッパ美術受容の様相と重ねて考証した興味深い内容でした。発表後、部内の近代美術、及び仏教美術研究者等との協議においても活発に意見が交わされました。今後、さらに研究が深まることを期待します。

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SPレコード鑑賞会開催

SPレコード鑑賞会の様子

 3月28日、SPレコード公開鑑賞会を無形文化遺産部研究室で開催しました。無形文化遺産部は、芸能部時代から伝統芸能に関する音源を収集してきましたが、そのなかには、現在では希少価値となった多くのSPレコードも含まれています。大正時代から昭和初期にかけて録音されたSPレコードを一般の愛好者に公開し、伝統芸能の継承に関して、あるべき継承の姿をレコードを通して考える場としたい、という意図のもとに、能狂言に対象を絞って鑑賞会を行いました。会場の都合で参加者を限定しましたが、当日は21名が参加し、かつての謡の表現の多様性にみな感慨を深くしていました。

「文化財の保存環境の研究」研究会-金属試験片曝露による環境モニタリング

増子昇氏による口頭発表「金属の錆生成について-金属学の立場から」

 研究プロジェクト「文化財の保存環境の研究」は、文化財を取り巻く環境の調査・解析手法を確立し、保存環境の現状把握と改善を目指しています。今回は、大気汚染や内装材料の文化財への影響評価のための金属試験片曝露調査について、その歴史や限界を論じました(2008年3月3日、参加者33名)。増子昇氏(東京大学名誉教授)には、窒素酸化物、硫黄酸化物、火山性ガス、海塩粒子等の文化財影響について、金属学分野の研究を基にご講演いただきました。また、当所名誉研究員門倉武夫氏は金属片曝露による文化財影響試験の歴史について、犬塚研究員は室内環境が文化財に与える影響を総体として評価するドシメーター(曝露計)の開発例について報告しました。今後の研究協力・研究の進展に有益な研究会となりました。

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