アンコール・タネイ遺跡保存整備のための現地調査IV

出土したテラス状遺構西翼部

 東京文化財研究所は、カンボジアにおいてアンコール・シエムレアプ地域保存整備機構(APSARA)によるタネイ寺院遺跡の保存整備事業に技術協力しています。平成30(2018)年8月20日~10月7日の間、昨年度から通算で第4次となる考古学的発掘調査を同遺跡において行いました。
 今回は、これまでに出土した東バライ貯水池土手上のテラス状構造物の継続調査、および同遺構と寺院東門との間に存在したと推測される参道の発掘調査の2点を主目的として、APSARA機構のスタッフと共同で実施しました。
 テラス状構造物は、調査区を西方へ拡張した結果、昨年度検出された東翼部分に加え、東西6m、南北2.5mの規模の西翼部分が出土しました。上面の石材が欠失していましたが、基礎は全周が存在し、これによって同遺構は東西に18mの規模であることが明らかとなりました。類例より、本来は南北にも同様の翼が付属した十字形を呈するものと推測され、今後さらなる解明が期待されます。
 参道に関しても、昨年度の調査区をさらに拡大することで、参道の幅員およびその両脇の様子を明らかにすることを試みました。その結果、路面の幅は約11mで、両側はこれより50cmほど高くなっており、そこには何らかの施設が存在していたと考えられます。
 今後は遺跡を訪れる観光客のための解説板の作成なども計画しており、学術調査と並行して、公開・活用のための整備も進めていく予定です。

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