ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)が実施する現地研修(フィジー)への協力

研修の開会式の様子
実物の資料を用いて分類・整理作業を行う研修生

 平成30(2018)年10月22日から27日にかけて、ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)文化遺産保護協力事務所(奈良市)がフィジーにおいて現地研修「文化遺産ワークショップ2018(フィジー)」を実施しました。この現地研修では、ACCUとフィジー博物館、文化庁が共催し、博物館収蔵品(主に考古学資料・民族資料)の記録法についてのワークショップを実施しました。研修にはフィジー国内から12名の博物館関係者が参加したのに加え、隣国であるトンガ王国からも1名の参加がありました。このワークショップのうち、前半の22日から24日にかけての3日間について、本研究所無形文化遺産部の石村智・音声映像記録研究室長が講師をつとめました。
 研修では、実際の考古学遺跡から出土した土器資料を用い、まず文様や部位(口縁部・胴部など)ごとに分類し、整理したものを台帳に記録する作業を研修生に体験してもらいました。次に、分類したものの中から特徴的な遺物をピックアップしてもらい、それぞれの遺物について拓本と実測図(断面図)を作成する作業を体験してもらいました。最後に、完全な形(完形)の土器の実測図の作成を練習してもらいましたが、これには練習用のレプリカを使用しました。最後に、作成した拓本および実測図をカード化して整理する作業を体験してもらいました。
 現地研修の良い点は、現地にある資料を実際に用いて作業を体験してもらえることで、より実践的な技術移転を果たすことができます。いっぽうで難しい点は、現地ごとに資料の性格が異なるため、それに合わせた研修内容を考え、工夫しなければいけないことです。例えばフィジーでは、遺跡から完形の土器が出土することはまれで、多くの場合、細かい破片の状態で見つかります。ACCUが日本国内で実施する考古学研修では、完形土器の実測の練習に重点を置いていますが、今回の現地研修では現地の実情に合わせ、土器の破片の分類・整理や、拓本による記録法に多くの時間をあてました。
 実際に研修生の多くは、実務で資料を様々な方法であつかってきたものの、システマティックに資料を分類・整理して記録を作成するプロセスを示した今回の研修は新鮮だったようで、興味を持って取り組んでくれたようでした。この研修が、この地域における文化財の保存に資するものになれば幸いです。

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