バガン(ミャンマー)における煉瓦造寺院外壁の保存修復と壁画調査

被災した尖塔部分の解体修復
美術史および図像に関する調査風景

 平成30年(2018)1月23日~2月13日までの期間、ミャンマーのバガン遺跡群内Me-taw-ya寺院(No.1205)において、壁画保護のための雨漏り対策を主な目的とする煉瓦造寺院外壁の保存修復を行いました。今回は平成28年(2016)8月24日の地震で被災した尖塔部分の修復処置と、塔頂部に残されたストゥッコ装飾の保存修復を中心に行いました。期間中には、ミャンマー宗教文化省 考古国立博物館局バガン支局からの依頼を受け、若手保存修復士を対象にしたワークショップを開催しました。今回のワークショップでは実際の作業に参加しながら、使用する修復材料の特性やその効果について理解を深めてもらうことを目的とし、その正しい使い方について技術指導を行いました。
 また、ミャンマーにおける壁画技法の変遷や美術史、図像に関する調査を実施しました。最盛期である11~13世紀の壁画調査が前回までに一段落したこともあり、今回は復興期ともいえる17~18世紀の壁画を対象として、バガンのみならずモンユワ近郊のキンムン村やポーウィン山洞窟にも足を運び、多くの情報を得ることができました。
 2月9日にはヤンゴンにあるユネスコミャンマー事務所を訪問し、東京文化財研究所のMe-taw-ya寺院におけるこれまでの研究成果や保存修復活動について報告を行いました。壁画の保存を念頭に置いた一貫性のあるプロジェクトと、地震による被災箇所への早急な対応プロセスを高く評価していただき、今後は情報を共有しながら協力関係を築いていくことで合意しました。
 今回で深刻なダメージが認められた被災箇所に対する処置が終了しました。来年度からは、被災箇所の修復から従来の目的である雨漏り対策を念頭に置いた外壁の保存修復へと徐々に移行していく予定です。今後も現地専門家と意見交換を重ねながら、バガン遺跡群に適した保存修復方針を組み立てていきます。

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