台湾中央研究院における国際シンポジウム「東アジアにおける文化遺産と宗教」への参加

会場となった台湾中央研究院民族學研究所
国際シンポジウムの様子

 平成30(2018)年1月8日から9日にかけて、台湾の中央研究院(Academia Sinica)とオーストラリア国立大学が共同で主催する国際シンポジウム「東アジアにおける文化遺産と宗教(Cultural Heritage and Religion in East Asia)」が中央研究院民族學研究所において開催されました。本シンポジウムには、台湾をはじめ、香港、韓国、オーストラリア、アメリカ、イギリスなどの多くの国から文化遺産を研究する専門家が参加し、本研究所からは無形文化遺産部音声映像記録研究室長の石村智が招待を受け、研究発表をおこないました。発表タイトルは「日本における宗教に関連した無形文化遺産と保護制度(Intangible cultural heritage and the protection system related to religion in Japan)」で、東大寺の修二会と祇園祭の山鉾巡行を題材に、宗教に関連した無形文化遺産については文化財保護法の範疇で含めることのできる要素とできない要素とがあることを論じました。本発表に対しては、韓国の研究者がコメンテーターとして、戦後日本の政教分離の政策にも言及しつつ、様々な観点からレビューをおこないました。
 本シンポジウムに参加した感想としては、東アジアの多くの国や地域では宗教は無形文化遺産の重要な要素のひとつと認識されており、そのことが保護政策や観光政策に反映されている事例が多いということがわかりました。そのことにより、遺産の宗教的要素が守られるという肯定的な側面がある一方で、宗教的要素が観光や開発のもとで本来の形を失ってしまうこともあるという否定的な側面もあるということがわかりました。
 ひるがえって我が国の文化財保護法においては、基本的に宗教的要素をその範疇に含めないという方針がとられています。しかし現実には、宗教団体が主体となっておこなう祭礼は文化財として指定することは難しいが、地域住民などのコミュニティが主体となっておこなう祭礼は文化財として指定することが可能であるという判断がなされています。しかし実際の祭礼においては、宗教的要素とそうでない要素を分けることは難しい場合が多いのも事実です。
 海外の事例と比較することで、日本では何を「文化遺産」として捉えているのか、つまり「文化遺産」とは何なのか、そうしたことを考えさせられる有意義なひと時でした。

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