「ネパールの被災文化遺産保護に関する技術的支援事業」による現地派遣(その9)

市長フォーラム参加者集合写真
市長フォーラムにおける文化庁熊本文化戦略官の講演

 文化庁より受託した標記事業により、引き続きネパールへの技術支援を行っています。2017年12月23日〜29日に5名をカトマンズに派遣しました。
 本派遣の主な目的は、「カトマンズ盆地内の歴史的集落保全に関する市長フォーラム」への協力です。世界遺産暫定リスト記載の歴史的集落を有するパナウティ市がホストとなり同市役所で開催された本フォーラムには、カトマンズ盆地内とパナウティ市周辺に所在する16市から13市の市長または副市長をはじめ約100名の参加がありました。東京文化財研究所は2016年より、世界遺産および同暫定リスト記載の歴史的街区や集落を所管する各市の専門官(技術者)達に対するワークショップや研修等の支援を続けており、彼らのレベルでは既に市を跨いだ連携が生まれていました。今回のフォーラムでは対象をさらに拡げてカトマンズ盆地全体の歴史的集落を管轄する市のネットワーク(連携協議体)づくりの必要性が市長レベルで共有されました。また、本協力事業の枠組みで実施中のカトマンズ盆地の歴史的集落の調査について東京大学の西村幸夫教授より、日本の伝統的建造物群保存地区制度について文化庁の熊本達哉文化戦略官よりそれぞれ講演いただき、現状における課題点や行政相互の連携のあり方も含めた歴史的集落保全の手法を参加者へ伝えることができました。
 カトマンズ盆地の歴史的集落保全体制を確立するためには様々な関係者による多大な努力が必要ですが、今後は上記ネットワークを通じて私たちの調査成果の反映や技術支援をより広く、効果的に行うことができるようになるものと期待しています。

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