台湾における鉄構造物の保存修復に関する現地調査

意見交換の様子

 保存科学研究センター近代文化遺産研究室では、平成29年8月19日から27日の9日間で台湾に現存する日本統治時代(1895-1945)に建造された鉄構造物の保存修復状況に関する調査を実施しました。今回の調査では、大空間を有する工場建築や橋梁など大規模建造物の調査が中心となりました。
 統治時代の建造物の保護は、1987年の戒厳令解除以降に本格的に始まり、指定・登録文化財のおよそ半数が統治時代の建造物です。
 今回の調査では、製糖工場を中心に調査しましたが、煙草や酒の製造工場は1990年代まで国の専売品として管理・製造されていたため、建物や製造機械類が操業停止時の状態で残されていました。こうした工場は、立地環境に大きく左右されますが、台北市などの大都市部に現存する工場の多くは、商業・文化施設へと活用され、まちづくりの拠点として新たな役割を担っていました。
 22日には、文化部文化資産局を訪問し、施國隆局長らと台湾での文化財保存の取り組みについてディスカッションを行いました。台湾では、2000年以降から生産・流通・加工などを含めた産業システムの保存に取り組まれるようになり、日本国内で取り組まれている産業遺産の保存について関心を寄せられ、活発な意見交換が行われました。

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