エスファハーン(イラン)における木製文化財の虫害に関するワークショップ開催

ワークショップの様子
歴史的建造物の被害状況の調査

 イランの歴史的建造物の多くにおいて主要建材はレンガや土壁ですが、屋根裏や梁、窓枠などには木材も使用されています。昨年度に実施した事前調査では、エスファハーンを含むイラン中央部から南東部にかけて「シロアリ」の被害が多く、歴史的建造物を保存する上での大きな課題となっていることがわかりました。「シロアリ」は木材の害虫として有名で、日本でも過去には多くの被害が見られましたが、徐々に防除対策が確立されてきました。その知見を活かして、イランにおける歴史的建造物や木製文化財の適切な保存対策の検討に資するため、4月17日から19日にかけてエスファハーンにて「木製文化財の虫害に関するワークショップ」を開催しました。
 本ワークショップには日本側からは文化遺産国際協力センターの友田正彦、山田大樹、保存科学研究センターの小峰幸夫(以上、東文研)、および外部専門家として環境文化創造研究所の川越和四上席研究員が参加しました。イラン側からはエスファハーンのみならず、ヤズド、テヘラン、ギーラーンなどの各地から20余名の専門家が集まりました。1日目および3日目には双方から、両国の歴史的建造物の材質や構造、虫害事例やモニタリング調査に関する発表が行われました。また2日目には、具体的な対策等について議論するため、シロアリに加害されている歴史的建造物を参加者全員で訪れ、被害状況の調査や、環境に悪影響をおよぼさないIGR剤(Insect Growth Regulator:昆虫成長制御剤)の設置試験等を実施しました。
 本ワークショップ終了後、イラン文化遺産・手工芸・観光庁は、エスファハーンにシロアリ防除に関する研究室を新たに設置する検討を始めていると伺いました。今回のワークショップがイランの貴重な文化遺産の保存に少しでも貢献できたことと思います。

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