ブータンの伝統的民家建造物に関する現地調査と研究協力協定書の締結

ティンプーでのMOU調印式
古民家調査の様子(プナカ県ツォサ村)

 東京文化財研究所では、平成23(2011)年度からブータンの版築造伝統的建造物に関する調査研究について、同国内務文化省文化局(DOC)と協力してきました。その契機は2009年と2011年に発生した地震によって伝統的工法で建てられた建物に大きな被害が生じたことで、公共民間を問わず建造物の耐震性能向上による安全性の確保と、現在も住宅建設等に広く用いられている伝統的工法の保護継承とをいかに両立させるかが喫緊の課題としてクローズアップされることとなりました。
 型枠内で土を突き固めて壁体を構築する版築造の建造物を対象に、その構造性能の把握分析と伝統的建築技法の解明という両分野で調査研究を継続してきましたが、民家を文化財として保存するための制度的枠組みも整いつつあることから、2016年度からは版築造の古民家建造物における基本的な形式分類と編年指標の確立を目的とした調査を科学研究費補助金(基盤研究B「ブータンの版築造建造物の類型と編年に関する研究」:研究代表者亀井伸雄所長)により実施しています。
 平成29(2017)年3月4日から16日にかけて行った共同現地調査では、ティンプー県及びプナカ県内で計16棟の古民家について実測調査等を行い、痕跡の観察や住民への聞き取り等とあわせて、当初形式や建築年代、過去の改造履歴等に関する考察のための情報収集に努めました。
 またこの間、本研究所とDOCとの協力関係をさらに強固にするため、両者代表による研究協力協定書への署名も行いました。有形無形の伝統文化を大切に守り続けていきたいというブータンの人々の思いに寄り添いつつ、歴史的建造物の文化的価値の明確化に寄与することができるよう、引き続き調査研究を続けていきたいと思います。

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