当研究所名誉研究員中村傳三郎旧蔵資料の受入

中村傳三郎旧蔵資料の一部

 当研究所名誉研究員中村傳三郎(1916-1994)の旧蔵資料を、ご遺族の中村徹氏から4月30日付でご寄贈いただきました。傳三郎は、1947年から国立博物館附属美術研究所(現東京文化財研究所文化財情報資料部)に奉職し、1978年の退官までに当研究所に在籍された近代日本彫塑の研究者で、オーギュスト・ロダン、荻原守衛、平櫛田中、新海竹太郎、北村西望らの作家研究、明治以来の彫塑団体の系統的調査を行い、日本近代彫塑史における実証的研究の先鞭をつけました。また彫塑・立体造型を主とする同時代美術の動向の調査研究にも従事し、批評活動も展開して、作家の創作活動に大きく寄与しました。今回ご寄贈いただいた資料は、1)碌山美術館出版物・碌山美術館関係書類、2)荻原碌山関係資料、3)高村光雲・光太郎・豊周関係資料、4)新海竹太郎関係資料、5)二科会七十年史関係資料、6)美術研究所・東京国立文化財研究所関係資料、7)開国百年記念文化事業会関係資料、8)「日本金属造形作家展」関係資料で構成され、いずれも近現代彫塑史研究の重要な資料です。
 こういった特定の人物や組織によって生成された文書群(アーカイブズ)は、研究資源としての価値を広く認められており、関係者の間で近年さかんに、どのように散逸を防ぎ、活用する環境を整え、また後世へ遺すかといった議論が行われています。当部ではこれまでにも矢代幸雄、梅津次郎、川上涇、久野健、高田修、田中一松ら元職員のアーカイブズを積極的に受け入れ、科学研究費助成事業「諸先学の作品調書・画像資料類の保存と活用のための研究・開発―美術史家の眼を引き継ぐ」(研究代表者:田中淳、基盤研究(B)2009-2012年度)の取り組みなどによって整理を進め、資料閲覧室を通して利用に供してきました。今回ご寄贈いただいた中村傳三郎旧蔵資料も個人情報、プライバシー、あるいは資料保全の問題を配慮しつつ、今年9月ごろに公開できるよう整理を進めております。

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