ネパールにおける文化遺産被災状況調査(その3)

カトマンズ・ハヌマンドカ王宮のアガムチェン寺
同シヴァ寺回収部材の整理格納作業

 文化庁委託・文化遺産保護国際貢献事業「ネパールにおける文化遺産被災状況調査」の一環として、2016年3月8日から26日にかけて、4名の建築保存専門家をカトマンズに派遣し、現地での調査や作業を行いました。
 今回は、主にハヌマンドカ王宮を対象に、以下の3項目を実施しました。
1) アガンチェン寺の詳細調査
2) 伝統的建築材料製作に関する調査
3) シヴァ寺からの回収部材の整理・格納および調査
 まず、同王宮のうちアガンチェン寺については、本体の三重塔が載る階下の三階建部分の詳細実測調査のほか、被災状況の確認や過去の改造変遷に関する検討などを行いました。
 次に、建築材料調査としては、伝統的な煉瓦の製作工場を訪問し、手作りによる作業の状況や品質などを確認しました。
 さらに、ハヌマンドカ王宮内の東側で倒壊した二重層塔シヴァ寺の部材については、前回11月調査に続いて調査分類、整理作業を行いました。今回は、軸部材や軒廻りなど長大な木製部材を中心に、分類・番付・記録を行い、仮設小屋に種別ごとに格納しました。これにより同建物の残存木材を全て確認しましたが、過去の改修状況等について重要な知見が得られたほか、全壊した割には各部材の損傷が軽微で、丁寧に使用部位の特定と復原検討を進めていけば、世界遺産の構成物件に相応しいオーセンティシティを保った形での修復が十分に可能であるとの認識に至りました。
 今後もこのような作業を通じて、日本の文化財修理における調査手法などの技術移転を図りつつ、現地に適した保存修復手法の検討を継続していく予定です。

to page top