企画情報部研究会の開催―光琳の「道崇」印作品について―

 2016年2月23日(火)、企画情報部研究会において、江村知子(文化遺産交際協力センター)による「光琳の「道崇」印作品について―尾形光琳の江戸滞在と画風転換」と題した研究発表がおこなわれました。
 尾形光琳(1658-1716)が画中に捺す印章には、年代による変遷があるとされ、光琳の初期の代表作「燕子花図屛風」(根津美術館)に捺されるのは「伊亮」印、晩年の傑作「紅白梅図屛風」(MOA美術館)に捺されるのは「方祝」印です。「道崇」印は、「伊亮」印と「方祝」印の間の時期に用いられた印章で、光琳は、この時期、数回にわたり江戸に滞在し、画風転換を果たしたとされます。「道崇」印を有する作品には、宝永2年(1705)の軸芯墨書のある「四季草花図巻」(個人蔵)、「波濤図屛風」(メトロポリタン美術館)、「躑躅図」(畠山記念館)などがありますが、今回の発表では従来ほとんど知られていなかった6曲1隻の「白梅図屛風」(フリーア美術館蔵)を取り上げ、その表現に、晩年の「紅白梅図屛風」へとつながる要素があることが指摘されました。「白梅図屛風」の画面は損傷が多く、筆致にも試行錯誤の跡が顕著ですが、光琳は、江戸滞在期に水墨画の表現を習得したようで、そうした問題とも関連する可能性があります。発表後は、印の改号や、屛風の形状、水墨表現との関連性などについて活発な議論が交わされました。今後は、「白梅図屛風」の詳細な調査が待たれます。
 なお、尾形光琳「白梅図屏風」(フリーア美術館)は、下記のウェブサイトで画像が見られます。 http://www.asia.si.edu/collections/edan/object.php?q=fsg_F1905.19

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