第10回無形民俗文化財研究協議会の開催

総合討議の様子

 12月4日(金)に第10回無形民俗文化財研究協議会が開催され、「ひらかれる無形文化遺産―魅力の発信と外からの力」をテーマに、4名の発表者と2名のコメンテーターによる報告・討議が行われました。
 東日本大震災以降の復興の過程においては、被災して甚大なダメージを受けた地域が「外の力」を取り込んでいくことで、結果的に文化継承が図られたという例が数多く報告されています。I・Uターン者や観光客、あるいはコミュニティの中でそれまで伝承に関わってこなかった層が新たに伝承を担うようになったり(伝承者の拡大)、新たな観客や支援者層に対して伝承を発信していったり(享受者の拡大)、様々なかたちで無形文化遺産を外に向かって「ひらく」際に、どのような仕組みや方法が必要になるのか、またそこにどのような課題や展望があるのか。今回は被災地域に限らず、過疎高齢化や都市化によって疲弊する全国各地に対象を広げ、「外からの力」と文化継承について議論を交わしました。
 青森、山形、広島、沖縄の四つの地域からの報告やその後の討議を通して、魅力を発信する方法や仕組みづくりといった具体的な話から、“伝統”と変容をどう捉えるか、文化を伝承していくということが地域にとってどのような意味を持っているのかといった話まで、多岐に及ぶテーマが出されました。その中で、四つの地域いずれも、最初から外の力に頼って伝承を繋げていこうとするのではなく、まずは伝承者やそれを取り巻く地域の方々が伝承の在り方についてきちんと議論し、葛藤する中で進むべき道を選択してきたという姿が印象的でした。今回の協議会は例年より多くの方にご参加いただき、なおかつ、保存団体の方など実際に伝承を担っている方の参加が目立ちました。無形文化遺産を「ひらく」ということへの問題関心の高さが浮き彫りになったと同時に、伝承の問題が当事者の方々にとっていかに切実なものになっているかということについても、認識を新たにさせられました。
 協議会の内容は2016年3月に報告書として刊行し、後日無形文化遺産部のホームページでも公開する予定です。

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