“オリジナル”研究通信(3) ―文化財修理の基本理念

 企画情報部では、来年度に行われる「文化財の保存に関する国際研究集会」の準備のため、“オリジナル”をテーマに部内研究会を開いています。12月は、長年にわたって文化財修理の第一線に臨まれてきた、所長・鈴木規夫と議論を交わしました。
 現在、「現状維持を原則とし、学術的・資料的・美的価値を損なわないように、必要最低限の処置をほどこす」ことが、日本の文化財修理の基本理念となっています。ただ、文化財の素材(材料)あるいは形態などどの部分に力点を置くのか、あるいはどの時点の姿を残すのかという問題は、文化財の本質的な価値がどこにあるのかという根本的な問題と密接に関わるもので、決して一律に判断を下せることではなく、現場においてさまざまにむずかしい判断が要求されるようです。
 特に興味深く感じたのは、日本には文化財が長年の時を経て身にまとう経年変化―よく古色・古びという言葉で言い表したりしますが―に美を見出し、それをうまく残しつつ伝えるという、日本独自の感性・価値観があるということでした。文化財が造られた当初の姿だけではなく、それが伝来してきた歴史の重みをも重視するこの考え方は、我々が新しく提示しようとしている“オリジナル”の考え方とも通じており、議論が活発に行われました。

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