イラク人専門家の人材育成事業

遺構のはぎ取り実習
(静岡県埋蔵文化財調査研究所)
金属遺物の保存修復実習
(奈良文化財研究所)

 文化遺産国際協力センターでは、イラク国立博物館の保存修復室の復興のために、研究所の運営費交付金およびユネスコ文化遺産保存日本信託基金をもとに、人材育成・技術移転を目的とした保存修復研修を実施してきました。研修コースは2004年度に始まり、本年度で5年目となります。招へいした保存修復の専門家は、のべ14名となり、木製品、金属器、土器、粘土版など、さまざまな対象物をテーマとした研修を実施してきました。
 本年度は、イラク国立博物館より保存修復室長のブタイナー・M・アブドゥルフセイン氏、修復家のタームル・R・アブドゥアラー氏の2名の保存修復専門家を招へいし、2008年7月1日から12月10日の約半年間にわたり、主に木製品の保存修復研修とそれに関連する保存修復技術の習得のための実習を実施しました。
 研修は、奈良文化財研究所および静岡県埋蔵文化財調査研究所、九州国立博物館および国内の保存修復機関の協力を得て行いました。保存修復の実習として、木製品の保存修復(東京文化財研究所)、金属遺物の保存修復(奈良文化財研究所)を行いました。さらに、これまでの研修から発展させ、本研修では、木材に関する基礎的な科学調査(静岡県埋蔵文化財調査研究所)や3次元CTスキャナをはじめとする最新の分析機器など(九州国立博物館)について学びました。文化財を構成する材料の分析や劣化のメカニズムを科学的な視点からとらえる良い機会となったことに、二人の研修生も非常に満足していました。
 6か月にわたる長期の研修でしたが、両研修生は意欲的に取り組んでいました。今回の研修成果をイラク国内の文化財の保存修復の現場で生かしていってくれることを願います。

to page top