第33回世界遺産委員会

ル・コルビュジエの作品群登録可否に関する投票の開票作業
審議風景。スクリーン中央に議長、両側に英仏2カ国語で審議内容が映る

 第33回世界遺産委員会は、6月22日~30日にスペインのセビリアで開催されました。40℃を超える暑さの中、時折迷い込んだ野鳥が飛び回る展示場を会場に、連日23時まで議論が行われました。日本からは関係省庁や研究機関、地元の遺産の一覧表への登録を目指す地方自治体関係者などが参加し、当研究所からは筆者を含め2名が参加しました。
 世界遺産一覧表には13件の遺産(自然2件、文化11件)が登録、1件が抹消され890件となりました。登録の傾向として、奴隷貿易関連の遺産が諮問機関の勧告を覆し登録されるなど、人権に関する遺産への高評価が伺えます。今回は情報照会の決議でしたが、国立西洋美術館を含むル・コルビュジエの作品群のような、複数の国にまたがる複数の遺産を1件として推薦することも、国際協調の観点から推奨されているようです。
 また、ドレスデン・エルベ渓谷の一覧表からの抹消が決議されました。登録直後に渓谷を横断する橋の建設が計画され危機遺産とされましたが、建設は中止されず、ドイツ側から具体的な代替案も提案されなかったためです。一覧表からの抹消は2例目ですが、遺産を持つ国が削除を希望していないにもかかわらず抹消されたのは初めてです。
 今回、予定されたいくつかの審議が来年に延期されました。秘密投票を伴う審議が複数あったのも原因ですが、同趣旨の発言の繰り返しも目立ち、議論の進行にも問題があるように思われました。また、国境問題を抱える国同士の対立による審議内容変更など、世界遺産の外交上の重要性を改めて認識することとなりました。

to page top