「サムライの美術」展併催のシンポジウムに参加して

メトロポリタン美術館
シンポジウム会場の風景
「サムライの美術 ART OF THE SAMURAI-Japanese Arms and Armor,1156-1868」展会場入口
発表を行う鈴木規夫
The Scholars' Dayで研ぎの実演と解説を行う研師藤代興里・龍哉両氏 (父子)

 昨年の秋から正月にかけて、米国のメトロポリタン美術館(以下Met.)で開催された(2009.10.21~2010.1.10)「サムライの美術 ART OF THE SAMURAI-Japanese Arms and Armor,1156-1868」展には、日本の古代から近世にわたる武器・武具の名品が出陳され、米国内だけではなく国際的にも高い評価を得て、3ケ月の会期中約30万余の入場者が訪れたそうです。また、この展覧会には、東京文化財研究所の「在外日本古美術品保存修復協力事業」により修復された、Met.所蔵の刀剣類や兜・鞍・矢筒なども展示されました。このような日本の文化財の修復に関連して開催された「The Sunday at the Met」(2009.11.8)と称するシンポジウムでは、展覧会の責任者であるMet.の小川盛弘氏による展覧会の解説と刀剣の取り扱い、英国・大英博物館元日本部長のヴィクター・ハリス氏から日本の刀剣とその美について、さらに日本からは、研師である藤代興里(ふじしろおきさと)・龍哉(たつや)両氏(父子)による研ぎの実演と解説、鈴木からは、在外修復事業の概要及び日本における漆工品の修復の理念と手法について発表しました。シンポジウムには、米国内外から700余の参加があり、Met.始まって以来のことと関係者一同大変驚嘆していました。また、翌日は、展示室内で「The Scholars’ Day」(11.9)と称する全米の修復や学芸関係者を対象とした催しがあり、同様の発表を行いました。このところ、米国内における日本美術・文化研究の退潮や日本の存在感の低下が懸念されていますが、その回復・進展を図る意味でも画期的な事業であったと感じます。この展覧会を十年余をかけて企画・実行され、Met.のみならず日本文化・芸術の国際交流と普及に多大のご貢献をされたメトロポリタン美術館武器武具部特別顧問小川盛弘先生に対し、心からの敬意と感謝を申し上げます。

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