第3回伝統的修復材料および合成樹脂に関する研究会「建築文化財における漆塗料の調査と修理-その現状と課題-」

研究会における講演の様子
会場からの質疑応答の様子

 保存修復科学センター伝統技術研究室では、1月21日(木)に当研究所セミナー室において「建築文化財における漆塗料の調査と修理-その現状と課題-」を開催しました。現在、浄法寺漆などの日本産漆塗料のうち、実に80%以上は日光東照宮などの建築文化財の塗装修理に使用されています。確かに日本では建築文化財の塗装材料として古くから漆を用いてきた歴史と伝統がありますが、その一方で漆自体は紫外線や風雨などに弱いという弱点もあり、その現状と課題には数々の問題点があります。今回の研究会ではこの問題を取り上げるため、まず明治大学の本多貴之先生に分析化学の立場から漆の劣化メカニズムについてわかりやすい解説をいただきました。次に伝統技術研究室の北野が塗装技術史の立場から実際の建築文化財で用いられていた漆塗装材料の実例について通史的に述べました。以上の内容を踏まえて日光社寺文化財保存会の佐藤則武先生からは、実際に塗装修理をされている技術者の立場から現在日光東照宮などで行なわれているさまざまな伝統的な塗装修理の状況について詳細なお話をしていただきました。そして最後に文化庁文化財部参事官(建造物担当)の西和彦先生から行政指導を行なっている立場から、漆にとどまらず塗装修理一般に対する文化庁の取り組み方やご自身のお考えなどをご講演いただきました。講師の先生方のお話は、科学、歴史、修復技術、行政指導それぞれのお立場での実践を踏まえての建築文化財の漆塗装に関する話題提供であっただけに、説得力もあり、会場からはさまざまな質問も出て大変盛会でした。

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