「臼杵磨崖仏保存環境調査報告会」の開催

国宝及び特別史跡・臼杵磨崖仏(ホキ石仏第二群阿弥陀如来坐像)

 東京文化財研究所は2000年より、国宝及び特別史跡・臼杵磨崖仏の次期保存修理計画策定のための調査研究を臼杵市と共同で進めてきました。11月6日に臼杵市中央公民館にて開催された「臼杵磨崖仏保存環境調査報告会」では、この10年間の研究成果の報告を行いました。
 まずは奥健夫氏(文化庁)より次期保存修理計画の意義について、下山正一氏(九州大学)からは臼杵磨崖仏が彫刻された阿蘇熔結凝灰岩に関する御講演を頂きました。また、Lee, Chan-hee氏(公州大学校)、Kim, Sa-dug氏(国立文化財研究所(大韓民国))からは、大韓民国における石造文化財の劣化状態調査、保存修復に関して御講演頂きました。その後、東京文化財研究所からは、臼杵磨崖仏で行われた調査研究の概要、磨崖仏表面の劣化状態と水環境、大気環境に関する調査結果を報告しました。また、劣化原因調査の結果に基づき、寒冷時の凍結防止策や着生生物制御などの劣化対策、劣化モニタリング手法に関する提案を行いました。最後は臼杵市教育委員会より「臼杵磨崖仏の長期保存計画ビジョン」と題して、次期保存修理事業およびその後のモニタリング・メンテナンスに関して計画案を発表し、聴衆に理解を求めました。
 一つの文化財としては異例の10年にわたる調査研究でしたが、ここで得られた成果も多く、臼杵磨崖仏のみならず多くの石造文化財でこの成果が活用されることを願っています。

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