フランス、スイス及びドイツの近代文化遺産の保存状態に関する現地調査について

大戦中、レジスタンスの破壊工作により脱線したという状態を再現した展示(フランス・ミュールーズ国立鉄道博物館)
修復作業中の観光潜水船(スイス・ルツェルン交通博物館)
整然と並んだ自動車(フランス・ミュールーズ国立自動車博物館)
道路標識を外壁のアクセサリーとしている(スイス・ルツェルン交通博物館)

 保存修復科学センターでは、3月8日(火)から14日(月)まで、フランス及びスイスにおいて鉄道、自動車、及び航空機等の保存、修復に関する現地調査を、またドイツにおいて、溶鉱炉の保存現場の調査を実施しました。フランスにおいては、ミュールーズにて国立鉄道博物館及び国立自動車博物館の調査を実施しました。ともに収蔵している鉄道車両及び自動車の数は相当数に及びその多さは目を見張るものが有ります。鉄道車両に関しては、展示環境も余裕を持った配置になっており、鉄道関連博物館によく見られる狭苦しさが感じられませんでした。各鉄道車両に関しては、屋内に保存されている事もあり、保存状態は良好でした。塗装については、やはり来館者の目を意識してかきれいに塗り直されており、その点は多少残念では有りました。しかしながら展示の仕方にも種々の工夫が見受けられ、リピーターを呼べる施設だと感じました。自動車博物館については、元々個人所蔵の自動車がベースになっているせいか、どれもきれいで自動車好きの人にはたまらない博物館という感じです。もちろん保存状態もかなり良いのですが一点だけ、タイヤの保存状態に関して、かなりの車が直接タイヤで支持している状態が見受けられタイヤの傷みが気になりました。スイスでは、ルツェルン湖のほとりに立地する交通博物館の調査を実施しました。2000平米を超える敷地の中央に子供達が遊べる広場を配し、周りに展示館を廻らせた博物館で、交通に関する事物を収蔵しており、かなり見応えのある博物館です。ただ、全体としては、やや雑多な感じは否めませんが、一カ所でこれだけのものを見る事が出来るのは幸せな事だと思います。展示物に関しては、やはり鉄製のものが多く、来館者が触る部分の防錆に苦労しているようです。最後にドイツにおいて製鉄所を調査しました。ヨーロッパでよく見るスタイルですが、ほとんど操業を終えたそのままの状態なので、ある意味非常に興味深い施設ではあります。唯一手を入れているのは観覧者の安全の為の施設(手すり、エレベーター、歩廊)であり、その他は手つかずの状態で見る事が出来るのは非常に興味深いし、面白いものだと感じます。日本ではやはり、火災等の避難経路等、法律上の制約が多く難しい部分が多々有ります。その辺、保存の仕方や法制度などなお、検討の余地が多いと感じました。

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