カンボジア、タネイ遺跡における三次元写真測量

デジタルカメラのWifi機能とiPadを使用した遠隔シャッター操作による高所撮影
オープンソースのソフトウェアを用いたデータ処理

 国際的な支援により様々な手法での修復活動が進むアンコール遺跡群の中で、タネイ遺跡は、過去に一度も本格的な修復の手を加えられることなく、鬱蒼とした森の中で静かに往時の姿をとどめています。東京文化財研究所は、この遺跡の価値を損なわず、かつ観光を含む活用面にも配慮した適切な保護を図るため、アプサラ機構による保存整備事業計画策定への技術的支援を継続しています。
 昨年より着手した同遺跡でのSfMを用いた三次元写真測量は、できるだけ安価かつ簡便に現地スタッフが実行可能な遺跡の現状記録手法の確立を目指して試行してきたものです。5月27日から6月2日までの日程で実施した今次ミッションでは、同機構スタッフとともに、内回廊内の全ての遺構の写真撮影と標定点のトータルステーション測量を行い、これらをオープンソースのソフトウェア(Visual_SfMSfM georefMeshlab)を用いて処理することで、内回廊内をカバーする遺跡の三次元モデルを作成しました。現在、モデルの精度を検証中ですが、この手法が確立されれば、特別の機材や予算を必要としない記録方法として、アンコール遺跡群だけでなく、他の途上国においても応用可能なものとなることが期待されます。
 なお、同作業の概要と進捗状況については、6月4、5両日にアプサラ機構本部にて開催されたアンコール遺跡救済国際調整委員会(ICC)第24回技術会合において報告を行いました。遺跡全域のモデル作成を含む基礎データ収集は、本年度中に完了する予定です。

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