「水銀に関する水俣条約」勉強会

 平成27年6月9日、東京国立博物館小講堂において、「水銀に関する水俣条約」についての勉強会を行いました。「水銀に関する水俣条約」とは、水銀が人の健康や環境に与えるリスクを低減するための包括的な規制を定める条約で、平成25(2013)年10月、熊本県で開催された外交会議で、採択・署名されたものです。その内容には水銀使用の制限や水銀添加製品の製造、輸出入禁止を含み、文化財保存分野にも影響があります。そこで東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、奈良文化財研究所など、多種多様な専門分野を背景に持つ保存修復科学センター連携分担者や文化庁の担当者、美術学芸課からの参加者とともに、水俣条約の内容とそのインパクトについて検討しました。
 水銀利用の文化財材料・技法としては、鍍金技法や絵画材料としての辰砂、ダゲレオタイプ写真の複製など、修理や復元にできる限り影響を及ぼさないよう、今後の規制の方向を注視し、必要なタイミングで意見を述べるよう行動することで一致しました。また、水銀灯、蛍光灯の製造中止が迫る中、LED照明の利用や線質評価について意見交換していくこととなりました。自然史標本や学術標本、近代の水銀使用産業機器や発掘現場の廃土処理など、さまざまな視点で問題点が抽出でき、専門性の広さを実感した勉強会でした。

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