オーストラリアにおける日本絵画調査

ヴィクトリア国立美術館における調査風景

 海外で所蔵されている日本美術作品は、日本文化を紹介する上で大切な役割を担っています。ところが、海外には日本の作品の保存修復専門家が少ないことから適切な処置がなされず展示が困難となっている作品も少なくありません。こうした日本美術作品の保存と活用を目的として、当研究所では在外日本古美術品保存修復協力事業を行っています。本事業では在外作品の修復協力やワークショップを実施して作品の保存と修復に努めています。今回はこうした修復協力事業における候補作品を選出するための調査として、オーストラリアで所蔵されている日本絵画作品の調査を行いました。
 3月16日から19日にかけて、ヴィクトリア国立美術館とオーストラリア国立美術館を訪れました。メルボルンのヴィクトリア国立美術館はオーストラリア最古の美術館であり、一方キャンベラのオーストラリア国立美術館は国内最大規模を誇る美術館です。今回の調査では、計8件(14点)の掛軸、巻子、屏風作品の詳細な状態調査を行うとともに、美術史的観点からの調査も行いました。この調査結果をもとに作品の美術史的評価や修復の緊急性などを考慮し、本事業で扱う修復候補作品を選定していきます。また、今回の調査で得られた情報は所蔵館に提供し、今後の作品の展示計画、保存修復計画の策定に役立てていただきたいと考えています。

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