企画情報部研究会の開催―韓国の「東洋画」について

稲葉真以氏の発表による研究会

 企画情報部の近・現代視覚芸術研究室では、日本を含む東アジア諸地域の近現代美術を対象にプロジェクト研究「近現代美術に関する交流史的研究」を進めています。その一環として2月17日の企画情報部研究会では、韓国・光云大学校助教授の稲葉真以氏に「韓国の「東洋画」について」の題でご発表いただきました。
 今日、韓国で「東洋画」と呼ばれているジャンルは、もともと日本の植民地時代に「日本画」が移植される過程で形成されたものです。その一方で、解放後の「東洋画」批判を経て、同じジャンルを指しながらも民族アイデンティティ確立の意味合いを籠めた「韓国画」の語も、1980年代から広く用いられるようになりました。稲葉氏の発表では、そのような政治的背景をもつ「東洋画」および「韓国画」の現在まで至る経緯と課題について、作例の紹介も交えながらお話しいただきました。
 日本でも1990年代から2000年代にかけて、近代以降に成立した「日本画」の概念をめぐる議論が評論家や美術史家、そして作家の間で盛んに行なわれました。さらに近年では、中国や台湾といった東アジアで展開する「岩彩画」「膠彩画」の動向を視野に入れた上での「日本画」系作家による再検討も進められています。今回の研究会でも、ルーツを共有しつつも国境を隔てて独自の展開をみせる韓国の「東洋画」の在り様に目を見張るとともに、ガラパゴス化した「日本画」を相対的にとらえ直す、よい機会となりました。歴史認識をめぐる日韓間の摩擦が取り沙汰される昨今ですが、研究会にご参加いただいた金貴粉氏(国立ハンセン病資料館学芸員)の「不幸な出会い方をした分、見ないようにするのではなく、改めてお互いを見ていく必要がそれぞれの研究を深化させる上であるのではないか」という感想を噛みしめつつ、今後の研究につなげていきたいと思います。

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