ブータン王国の伝統的建造物保存に関する拠点交流事業

ブータン内務文化省文化局リンジン局長(左)と東文研亀井所長(右)
ワークショップ参加者(国立図書館前庭にて)

 2012年度より文化庁委託事業として継続してきた標題の拠点交流事業の締め括りとして、12月20日から24日まで最終のミッションを現地に派遣し、同国内務文化省文化局と共同で事業総括のためのワークショップを開催しました。民家等の伝統的版築造建造物の適切な保存と耐震性能向上を目指し、3年間にわたり実施してきた工法調査・構造調査の成果を両国メンバーより発表するとともに、今後ブータン側が取り組むべき作業の展望等をめぐって、関係者間で意見交換を行いました。同局局長と東文研所長とが共同議長を務めたこのワークショップには、本事業の直接のカウンターパートである同局遺産保存課のほか、同省災害管理局、建設省技術サービス課、ブータン基準局、国立図書館等から、関係者が出席しました。
 工法調査班は、これまでに約60件の民家や寺院、それらの廃墟、廃村、新築現場等で行ってきた実地調査や職人への聞き取りをもとに、伝統的な工法(補強を意図したと思われる技法を含む)を整理しながら、調査項目の標準化と、建築形式の類型と編年に関する試案について報告しました。他方、構造調査班は、破損状況から窺える構造的弱点の克服を目的とした、材料試験、常時微動計測、及び引き倒し実験の結果に基づいて、構造強度の基本的評価手法と、構造解析の試験的シミュレーションを提示しました。さらにこうした調査を今後どのような手順で継続・発展させ、構造的安定性判定のためのガイドライン策定に結びつけていくか、という中長期的なロードマップを提案するとともに、その間にも急速に失われていく既存建物の保存方法についても議論を行いました。
 3年間の共同調査は、同国の伝統的建築技術を理解するための序章に過ぎず、その歴史的価値評価と適切な保存策の確立のためには、いまだ長い道のりを残しています。しかしその一方で、地震や豪雨等の自然災害や、急激な都市化の波によって、有形無形の文化遺産が失われていく様子も目の当たりにしてきました。私たちに出来ることは、国際的視点からブータンの文化遺産保護を支援することであり、今後も同国の人々と協力しながら努力していきたいと思います。

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