第37回世界遺産委員会

日本から推薦した資産が「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として世界遺産リストへの記載が決まった瞬間

 第37回世界遺産委員会は6月16日~6月27日にカンボジアのプノンペン(27日の閉会式のみシエムリアップ)で開催されました。当研究所では、世界遺産リスト記載資産の保全状況や、リストへの記載の推薦に関する資料の分析を事前に行うとともに、筆者を含む5名が委員会に参加し、情報収集を行いました。
 今回の世界遺産委員会で新たにリストに記載されたのは19件の資産です。日本が推薦した富士山の審議では、日本以外の20の委員国のうち19の国が記載賛成の発言を行う一方、三保松原を除外する決議案に多くの委員国が反対しました。推薦書などの資料や日本側関係者の説明を通じ、各委員国が富士山や三保松原の価値を十分理解したことが、この結果につながったと考えます。
 また、パルミラ遺跡などシリアにある6件の資産が「シリアの世界遺産」として危機遺産リストに記載されました。国内情勢が不安定で保全管理が困難となったためですが、治安の問題で具体的な対応は難しく、効果を得るには時間がかかると思われます。
 このほか、リストへの記載について、審議する資産の件数削減、委員国の任期中の自国資産の審議自粛が検討されましたが、反対する委員国が多く、いずれも決定されませんでした。世界遺産委員会ではリストへの記載だけが審議されているのではなく、どの議題も世界遺産の保全には重要です。当研究所は全日程に参加し、関連情報の収集・分析・発信を行っていきます。

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