第6回伝統的修復材料及び合成樹脂に関する研究会

研究会での発表の様子
研究会での総合討議の様子

 保存修復科学センターでは、1月24日(木)に当研究所セミナー室において、各種伝統的な修復材料のうち「建築文化財における塗装彩色部材の劣化と修理」をテーマとして取り上げた研究会を開催しました。この研究会は、平成21年度に開催した第3 回研究会の「建築文化財における漆塗料の調査と修理 ―その現状と課題―」、平成23年度に開催した第5 回研究会の「建築文化財における伝統的な塗料の調査と修理」の続編ともいえる内容です。建築文化財の外観などに塗装彩色された材料や部材は、日本の気候風土の中では材質劣化や生物劣化が起こる場合が多く、これらに対処する修理が繰り返し行われてきた歴史があります。
 今回の研究会では、これらに関する諸問題について、保存修復科学(塗装彩色材料および生物学)・建造物の修理現場・行政指導それぞれの立場から、最新の情報を提供していただきました。まず伝統技術研究室の北野が塗装彩色の材質劣化について述べ、次に生物科学研究室の木川りか室長が塗装彩色を含む部材の生物劣化として、主に日光社寺文化財の虫害と霧島神宮のカビ被害とその対処事例に関する話題提供を行いました。続いて実際の建造物修理担当者である京都府教育庁指導部文化財保護課の島田豊氏から石清水八幡宮の塗装彩色修理、平等院鳳凰堂の塗装修理に関する事例報告、厳島神社工務所の原島誠氏から厳島神社社殿建造物の塗装修理に関する事例報告をそれぞれしていただきました。最後に文化庁文化財部参事官(建造物担当)の豊城浩行氏から、現在文化庁が塗装彩色部材の修理を行う上での基本的な考え方に関する概要説明をしていただきました。研究会のテーマが塗装彩色の修理に直結した内容であることから関係者の関心が高く、盛会でした。

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