キンベル美術館所蔵「二十五菩薩来迎図」修復中の調査撮影

撮影調査風景
「二十五菩薩来迎図」右幅、キンベル美術館(修理前)
(左)同部分
(中)同部分裏面カラー画像(左右反転)
(右)同部分裏面近赤外線画像(左右反転)

 在外日本古美術品保存修復事業として平成23年度より「二十五菩薩来迎図」(キンベル美術館、フォートワース、米国)の修復を行っています。この作品は絹本着色の二幅対で、14世紀頃の制作と見られます。諸菩薩は皆金色で精緻な切金文様が施されていますが、経年の汚れのために画面が暗く沈み、随所で糊浮きが生じて保存上の問題がありました。今回の修復では作品を解体して表装を改めることとし、現在、右幅の肌裏紙の除去が完了した状況です。画絹を裏側から見ると、下描きの墨線や裏彩色が確認でき、修復のために必要な調査と撮影を行いました。作品表面から見ると、諸菩薩は端正な顔貌で表現されていますが、近赤外線画像で確認すると、表面のやや硬い線描に較べてより柔和な線描による、おおらかな表情のすぐれた下描きが作品全体に存在していることがわかりました。また画絹の裏から白や緑の絵具を塗った裏彩色が正統的な仏画らしく施されていることが確認できました。このような画像は、解体修理の際にしか記録できません。作品の表面だけでなく、裏面も高精細画像で記録することによって、より安全に修復を進めることができ、今後の研究資料としても活用できます。所蔵館学芸員とも協議を重ねながら、今後の作業を進めていきたいと思います。

to page top