白馬会展覧会評(三)

  • 破裂刀
  • 日本
  • 1907(明治40)/10/23
  • 1
  • 展評

△和田英作氏 女の横顔、肖像の前方に空間を多くしたのは一寸気がきい て見える、色の調和もよい、然し主点がバツクに負けて居る、夫れから顏に丸味 が無いのも疵だ。
△岡田三郎氏 一ツは子供の肖像で他は和田氏のに似たもの、庭 園に令嬢風の女が立つて居る所、前の樹木に赤い花 があるそれが目触りになつて全体の調子を破つて居るやうに感ぜられる、他の二点共顏に丸味を欠いて居る所は和田氏と一つだ
△今度和田岡田両氏の作品を見て妙なことを発見した、それは従来両氏共モデルの撰択に少からず 苦心する人で、肖像でも何でも何日も美人に限つて居たやうだつた、縦令モデルは実際美人で無とも、両氏が描き上ると美人に出来た者だ、 然るに今度は揃ひも揃つて美人を避けた所は一段と興があつて面白い、先和田氏のは猪に着物を着せたやうで、房州の山出のやうだ、夫れか ら岡田氏のを見ると是れは又変つたもので、顔の長いこと恰も滑稽鏡で 見る如し他では一寸見付かり相も無い、小説に於て自然派の作家 が好んで筆を性慾の方面に向ける如く、醜婦を写すが絵画に於ける自然派と思つて居るのか知ら、など云つてハイカラがつて居た書生もあつた。
△三宅克己氏 お得意の水彩画が数十枚出て居る、博覧会の二枚は氏 にとつて甚だ気の毒な出来栄えであつたが、今度は小いものに中々よいのがあ る、其中で「森の夕日」は調子が巧く整ふて居る、それと今一枚「谷川 」も悪く無い、が水が横に流れて居るやうでチト可笑い、其他一寸 したスケツチは水彩画でなければならぬ面白味のものも見受けた。

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