白馬会画評(四)

  • 四絃
  • 都新聞
  • 1904(明治37)/11/16
  • 6
  • 展評

次に白馬会の先達黒田清輝氏の大隈伯肖像ハ如何しても気品の有る処から、一目して大家の作と判るので有る。他に肖像が幾点も有るが之れ位品位の有る画ハ他に求むる事が出来ぬのハ如何し ても争はれぬ者で有る。
花の四枚の中でハ芥子の花などハ好きで有る。静 物なども見て居れば見てゐる程好くなつて来る。之を見てハ他の静物画の筆力の無いのが見窄らしい位。
小林萬吾氏の樹蔭ハ画面の 半分から下が最も佳く乳母車などハ好い様だが上部の木の葉な どハ少しく感服が出来なかつた。
藤島武二氏の画ハ装飾用の二面 の中でハ蝶が面白いが朝の方にハ黒田氏の面影が見えてゐて面白 いと或人が云つてゐた。
橋本邦助氏の作でハ静物画に最も其の技倆 を見る可く、薔薇の画に描いて有る硝子などハ実に巧なものだ。惜 しい事にハ草花の茎が花葵も雑花も一様に只描いたと云ふ計りで花などに比べると多少無雑作に描き過ぎて有る。眠れる小児ハ可憐の作で有る。
中丸精十郎氏の作でハ草原が最も面白い。此 の画ハ近く寄て見ると多少の欠点が有る様だが少し離れると非 常に好い心持がする画で有る。
第五室のウヰツマン夫妻の画ハ参考品 の無い日本にハ多少参考になるもので有る。牧場の朝霜ハ秋 の月の末から初冬にかけて日本などでも彼の如き風景に接する事が有 る。水に映る家ハ手前が最も感服出来ぬものだ。
白百合ハ草の 描き方が女丈に小細工を弄してゐて良人程にこなれてゐない。
参考品 でハコローの模写、筆者不詳の老婆など最も面白い。

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