白馬会の略評(二)

  • 東京日日新聞
  • 1902(明治35)/09/24
  • 4
  • 展評

小林氏の水難救済の図はまだ出来きらんから評することは出来んが裸体の人間を二十何人と描いたのは日本に絵が始つてから初てゞあらう是から骨も折れるだらうが充分出来上つたら非常に立派なものにならうと思はれる李鴻章の下絵は恐らく佐藤軍医総監が療治をする処であらうと思惟するが此絵は唯大きいばかりで組立から去つてどうも感服することが出来ぬ絵の具を付けるまでには多分修正する処があらうか黒田氏のは相変らず薄い調子で描き出されてある殊に海の曇つた夕景の絵は如何にしてあの色を出したかと思はれる又同氏の水絵は未だ曾て見ない処であつたが非常に手際なもので船の図などは殊に好く見えた安藤氏の出品には別に評するほど骨を折つた者はないやうに見えるが先づ中で一番好いのは曇つた空に山がボーと見えて居る図であらうか同氏に対しては今少し骨折つて貰ひたいと忠告して置かう三宅氏は水絵を専門として種々研究されて居るさうだが昨年よりは技倆に於ても進歩し又描き方も変つて来て居る同氏の出品中最も好いのは曇つた空に西洋造の家を描いた図であらう水絵であれだけにやつてのければ油絵でおる必要もないやうに思はれる同氏は水絵を以て立つと云ふ決心で益々研究されたら非常に立派な画伯にならうと信ずる赤松氏のは昨年のより少し劣つて居る如く見える色も悪るし形も悪いが是は技倆の割合より大き過ぎたからでも有うか中丸氏のモザイツクは日本で初めて出来たもので従来西洋からも来て居らぬ尤も今までは日本で之をやる人がない為めでもあらう中丸氏が帰つたら日本でも盛んに応用するが宜いマリヤの図又花の図の如き非常に手際能く出来て居る、まだまだ沢山あるが一寸覗いた丈けであるから目録でも出来たら能く観た上で細評を試ることに仕やう

前の記事
次の記事
to page top