白馬会の略評(一)

  • 東京日日新聞
  • 1902(明治35)/09/23
  • 4
  • 展評

一昨々日から初まつた白馬会はまだ入口が出来ぬにも拘らず観覧者の多いのは白馬会のお得意の為であらう、此度の装飾は極く真面目に造られ中も唯だ真四角に造つただけで白馬会の特色は別に現はれて居ない
今回の出品を見るに先輩の絵画は至つて少ない、黒田氏などのスケツチの小さいのを五六枚しか出品せんやうであるし安藤氏も非常に小さいものを申訳だけに出して居るかのやうに思はれる、先づ目立つのは岡田氏と和田氏の絵で夫から非常にコンポジシヨンをやつたのは小林萬吉氏の水難救済の図である、目録のない為に観覧者は一々落款に依て書人を知ると云ふ不便はあるが、細かに二三を評すれば岡田氏の裸体の多くはコランを真似て薄い調子で書き上げてある、立つて居る薄い絵などは非常に調子能く出来て居るし、同く立つて居る大きな絵の草などは得も云はれぬ妙味がある、それに景色画の中では船の絵が非常に調子能く出来て居る、和田氏の絵は日本に居る時から景色は最も得意であつたが、向ふから送つて来た景色画は一層目を新にせしむる感がある、殊に日暮の景で堤の処に大きな木のある絵などは能く出来て居る、次に藤島氏の絵である、是れはまだ出来上つては居ないやうだが古代の楽器を持て居る女などは実に調子能く出来て居る、尚ほ松の木を二枚続きに描いた絵などは日本絵の先生が見たら驚嘆する程の旨い調子で書上げて居るが、藤島氏の技倆は新進の中で最も賞賛すべきものであると信ずる

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