白馬会展覧会略評(四)

  • 黒白子
  • 中央新聞
  • 1902(明治35)/10/10
  • 1
  • 展評

三宅克巳筆『暴れ模様』 流石に倫敦よりの帰朝後初てのこととて凡て中々面白く水彩画として場中唯一の見物なる可し、此作暴れ んとする秋の野の雲間を漏るゝ光及び其緑草に落ちたる光線共に 妙なり只だ色彩の変化少く雲の重きに過ぎたるやに感ぜらるゝは如何『角筈村夏の午後』亦佳其他の巴里倫敦の風景皆亦妙な り△長原孝太郎筆『船頭の妻』面白からぬデツサンなる哉船頭なる女の手を上げて眺め居る腰付何やら舞にても舞ひ居るかの如くいと可笑し△中丸精十郎作『モザイク洗濯の神、花』 面白し此人曩頃巴里にて専らモザイクを研究して帰朝し目下日本にて其用なきに苦しめり とか聞く後来追々此種の歓迎に資する為には今少し大作を以 つて人目を惹くの要ある可し△藤島武二筆色鉛筆画数点 スケツ チとしていづれも頗る雅致に富めり殊に居酒屋の如き着眼最も面白 く筆致亦軽妙△其他青年諸士の作いづれも勉強の余になれる多数の 出陳を以つてし其間進境の歴然たるものあり然れども徃々其自家の 習熟如何を省みず漫に筆を大作に染めんとするが如きの弊あるを見 るは少しく戒心す可きなり(完)

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