白馬会瞥見(其七)

  • 瞥見生
  • 国民新聞
  • 1901(明治34)/11/01
  • 3
  • 展評

高木誠一氏の『小川の影』は可なり作かと思ふ其れに作も正直だし色も場 所も有まり悪くない様だ其の他『三笠山』も『五條の涼み場』も余り感心しない◎柴崎恒 信氏の『雑草』は如何にも色が美はしくないで諸処に気持の悪い色 が見て妙でない其れから同氏の『ヤヲカラ草』も同様だ幾らか画き方が親切だけ見 いい処が有る様に身受けた◎木元鐘吉氏の『夕月』は同氏出品中の 上作でなかなか感心する其他『とまり船』も上作だが今少し総てに深接がほしい其の他『夕月』も『桜』も無難の方だ◎中村勝治郎氏出品五枚の内 で『逗子の富士』が尤も上作だ色も品があり実に申分の無い作だ其 れから『乙女』此れも先づ上作の方で働きも可なり現はせれて居るが慾を 云ふと色が多少ドギツクはないかと思はれる其の他『紅葉』も『晩秋の深林』も同じ様に色 がドキツク方で有まり感心しない『逗子の富士』は比して見ると余程下作の方に見 える◎三宅克己氏の水彩画英国風を模して面白い処が有るが其 の内でも『朝景色』『道のかげ』などは特に無難の様に見へる◎中沢弘光氏の水彩画 も沢山出品で有る■御隣りの三宅氏とは流儀も異つて少し 乱暴の方だ■又た面白味の有るのが有る『本願寺』『三條納涼』『雨後の富士』などはなかなか色もよし活気もあつて上作の方だ

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