白馬会瞥見

  • 香夢生
  • 二六新報
  • 1900(明治33)/10/23
  • 1
  • 展評

△白瀧幾之助氏の「花嫁」 場中第一の大作である、通常の画家は一人物さへもアレダ ケに画くのは困難であるのを、サラサラと画き上げた技倆には敬服した、個々別々の人物 としては先づ申分なく、殊に老母の顔などは能く出来て居る、が、惜いかな、総体の関係が薄く、従つて活動に乏い、其から婚禮の支度室としては添物が足らぬ、角隠と指輪とを除けば少も婚禮の支度らしい所が見えぬ、振袖と襠(殊に襠の紅絹裏)の色は濃過ぎる又室内何となくサビシク、或人が葬式に行く支度の室だと言 ふたのは酷評ではあるが穿ち得た詞であらう、又全体にモ少し黄色味を帯 ばせたらばよかツたらうと言はれたが、此は聴くべき詞である△同氏の「少女」 少女が椅子に倚 ツて熱心に編物をして居る趣が十分に会得出来る、上出来である が、強ひて欠点を言へば窓より顔にあたれる光線が少し弱過ぎる、モ少 し強くしたならば一層の見栄があると思はれる△磯野義雄氏の「瞽者」 題目は至極面白 いが、イクラ贔屓目に見ても看板絵のやうでシマリがなく、一向に見応がない、ツマリ下絵 を無視したからである、斯る大きなものに軽率に筆を下したのは不注意千萬であ る(つゞく)

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