白馬会展覧会一口評

  • しらうと
  • 二六新報
  • 1900(明治33)/10/19
  • 1
  • 展評

△黒田清輝氏は不在中でもあり、小幅ばかりしか出て居ないが、「海辺の雪」と題する のが善く出来てゐる、雪の降りつゝある海上及び岬が模糊として寒く凄 く表はされた処は、観者をして肌に粟を生ぜしめる△藤島武二氏の「浴後」は婦人 の横顔が善く描かれて居る、其腰や脛や浴衣などの硬く見ゆるの が瑕である△小林萬吾氏の「かどづけ」は、素人眼に見て余り遠近法が激過ぎはせぬかと危 ぶまるゝ位に画いてある、岡持を提げて振り返つて居る小娘は上出来で、其下駄の半ば覆つてゐるのが面白い△長原孝太郎氏の「子守」は、日盛りの光線 が善く画れて居る朝や夕方のやうに一方から日の射してゐる所謂片光■■■■(判読不能)■■■■ 其山に屋根に橋に射した日光と水に■せる山影橋影などを綜合 した手際は褒めて置いて宜し△白瀧幾之助氏の「花嫁」は、子を抱てゐる母だけを小さく画いて、其他の人々は皆離れて居るに関らず大きく画いてあるのは遠近法 に合はない、けれども個々面上のイキスプレツシヨンは真に迫つて居る同氏の 「少女」も色彩筆致共に沈着た佳作である(しらうと)

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