白馬会展覧会妄評(下)

  • 漠漠黙翁
  • 日刊人民
  • 1900(明治33)/10/28
  • 5
  • 展評

◎藤島武二氏の「浴後」は決してわるくはないが腰の辺の「カドミユム」の勝ち過ぎた色彩と肱 の関節とはどうも感服が出来ぬ
◎北蓮造氏の小品中見べきもの二三あつた
◎矢崎千代治 氏は毒々しき色彩が未だ抜けないやうに見受けられた草木の反射ならば今少し変化がなければ不可ぬ
◎「エミールオールリツク」氏の奇抜な描き方の水彩画は翁 等には何ともよしあしが分り兼るが楓といふのが流石と敬服した
◎白瀧幾之助氏の「花嫁」は中々の評判物だが写された人々が寧ろ憂を含んだ顔付 をして居ると云ふ評は活動をして居ないと云ふ評と共に當つて居るもどうやら厭な婚禮らしいそれにつけても此指環の主が……と云ふ風であるしかし顔 や衣服の描きこなし方はわるからう筈はない
◎和田英作氏の風景独逸「グルウネワルト」の夕陽及び「ブラツツ」の冬期等は実に得難ひ佳作であろう
◎岡田三郎助氏の絵には番号 が附て居ないから何処の景色だかは分らないが其筆致に其色彩に愈々面白い作品を見られる様になつたのは誠に心嬉しい事である
◎此他諸氏の作品もあれど之等はお預りとして他日破天荒の作品が出づるをまつて更 に筆を採る事もあるだらう兎に角学んで倦ざる事なれば一層励み給 へよや(完)

前の記事
次の記事
to page top