安部栄四郎

没年月日:1984/12/18
分野:, (工,雁皮紙)

 雁皮を用いた出雲民芸紙の創作者で人間国宝の安部栄四郎は、12月18日午前11時54分、クモ膜下出血のため島根県松江市の松江市立病院で死去した。享年82。明治35(1902)年1月14日島根県八束郡に製紙業家の二男として生まれる。9歳より手漉き和紙作りを手伝い始め、出雲国製紙伝習所で修業を積む。雁皮紙は雁皮の繊維を原料とし、その特質を生かした緊密でなめらかな紙質のもので、変色や虫害に強く永久保存などの記録用紙として適しており、和紙の王様とも言われる。昭和6年松江市を訪れた民芸運動の提唱者柳宗悦に出会い推賞されたことが契機となり、雁皮紙による出雲民芸紙の創作を始める。民芸運動を通してバーナード・リーチ浜田庄司河井寛次郎棟方志功らとも親交を深めた。9年紙漉きとしては初めて東京の資生堂で個展を開催する。35年より3年間宮内庁の依頼により正倉院宝物紙を調査、同年島根県無形文化財の認定を受ける。42年日本民芸館賞を受賞、翌43年「雁皮紙製作技術保持者」として国の重要無形文化財(人間国宝)に認定された。49年パリ、51年ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスで個展を開催し、和紙の文化を海外に紹介、また55年北京で行なわれた展覧会では「中国は紙漉きの先輩」と展示品348点すべてを中国側に寄贈した。58年10月自宅横に、70余年にわたり漉き上げた和紙のほか棟方志功の襖絵、河井寛次郎の陶器など約1500点を収蔵・展示する「安部栄四郎記念館」を開館、また紙漉きの技術を伝えるため60年秋の完成予定に向けて伝承所建設の計画も進行中だった。著書に『和紙三昧』『紙すき五十年』などがある。

出 典:『日本美術年鑑』昭和60年版(260頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
『日本美術年鑑』に収録されている以下の記事にも「安部栄四郎」が含まれます。
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