番浦省吾

没年月日:1982/10/15
分野:, (工,漆)

日展参事の漆芸家番浦省吾は、10月15日、心不全のため死去した。享年81。1901(明治34)年2月24日石川県七尾市に生まれる。15年七尾尋常高等小学校を卒業し、初め画家を志すが、21年より蒔絵の技術を習得、漆芸の道に入る。24年頃京都に出て、30年第11回帝展に「秋之夜蒔絵棚」が初入選、36年文展鑑査展で「草花図彩漆衝立」が選奨となり、37年のパリ万国博覧会では名誉賞を受賞する。戦後、45年漆芸「創人社」を結成し主宰、53年には解散となるが、新たに朱玄会を結成した。しかし主たる活躍の場は日展であり、47年第3回日展以後たびたび審査員をつとめ、49年より依嘱出品、56年第12回日展に「双蛸図漆貴重品筥」を出品している。58年評議員、62年会員となり、同年の第5回日展出品作「象潮」により翌年日本芸術院賞を受賞した。その後71年理事、76年参与、80年参事となる。また66年大阪・四天王寺極楽門に「釈迦十大弟子」等四面の漆絵大壁画を制作した。代表的作品には上記のほか「春の海」(74年)「日のある風景」(76年)「陽と菜」(78年)「浜千鳥手文庫」(80年)などがある。海や雲などに多く主題をとり、漆に金属も用いた斬新な作風を見せた。また、71年京都漆芸家協会を設立し会長に就任。72年京都府美術工芸功労者、74年京都市文化功労者として表彰され、京展、大阪市総合美術展、兵庫県美術展等の審査員もつとめるなど、関西漆芸界の中心として活躍した。79年日本新工芸家連盟創立委員、81年勲四等旭日小綬章受章。

主要出品歴
1930 第11回帝展 「秋之夜蒔絵棚」
1931 第12回帝展 「運動による構成、海と山と空・蒔絵衝立」
1934 第15回帝展 「水辺譜彩漆衝立」
1936 文展鑑査展 「草花図彩漆衝立」選奨
1936 文展招待展 「草花図彩漆衝立」
1938 第2回新文展 「彩漆豌豆之衝立」
1940 紀元2600年奉祝展 「漆器双華二曲屏風」
1942 第5回新文展 「漆南瓜之図二曲屏風」
1944 戦時特別展 「献菜図小屏風」
1947 第3回日展 「根菜図四曲小屏風」審査員
1949 第5回日展 「漆器双實図小屏風」依嘱
1951 第7回日展 「乾漆扁壷」依嘱
1952 第8回日展 「菜景・漆衝立」依嘱
1953 第9回日展 「野鶴漆衝立」依嘱
1954 第10回日展 「双華図漆小屏風」依嘱
1955 第11回日展 「想漁図漆衝立」審査員
1956 第12回日展 「双蛸図漆貴重品筥」依嘱
1957 第13回日展 「漆衝立 濤」依嘱
1958 第1回社団法人日展 「うしを二曲屏風」評議員
1959 第2回社団法人日展 「潮・二曲屏風」評議会・審査員
1960 第3回社団法人日展 「夜潮」評議会
1961 第4回社団法人日展 「壁面装飾(川)」評議会
1962 第5回社団法人日展 「象潮」会員・審査員
1963 第6回社団法人日展 「みち潮」評議員
1966 第9回社団法人日展 「潮文額」評議員
1967 第10回社団法人日展 「山月」評議員
1968 第11回社団法人日展 「海と太陽」評議員・審査員
1969 第1回改組日展 「双象」評議員
1970 第2回改組日展 「青い夜」評議員
1971 第3回改組日展 「夜潮」理事・審査員
1972 第4回改組日展 「双象」理事
1973 第5回改組日展 「海どり」理事
1974 第6回改組日展 「春の海」理事
1975 第7回改組日展 「山月雲象」評議員
1976 第8回改組日展 「潮文」参与
1977 第9回改組日展 「潮文」参与
1978 第10回改組日展 「陽と菜」参与
1979 第11回改組日展 「潮文」参与
1980 第12回改組日展 「波の象」参事
1982 第14回改組日展 遺作「潮文の貌」参事

出 典:『日本美術年鑑』昭和58年版(284-285頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「番浦省吾」『日本美術年鑑』昭和58年版(284-285頁)
例)「番浦省吾 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/9834.html(閲覧日 2024-03-29)

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