田中親美

没年月日:1975/11/24
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 古筆研究家田中親美は、昭和50年11月24日、老衰のため東京都渋谷区の自宅で逝去、享年100歳。本名茂太郎。明治8年4月9日、大和絵師有美を父として京都に生まれ、明治17年一家をあげて上京、同20年多田親愛に入門して書道を学び、師の教えに従って古筆の模写に精進した。親美の号は師と父の号より一字ずつ取ったものである。18歳より80歳に至るまでに模写した古画・古筆の作品は3000点に達し、重要なるものは別掲の通りであるが、絵巻・荘厳経・古筆を主とし、仏画・琳派にまで及び、伝顧愷之筆女史箴図巻模本詞書(小林古径前田青邨模、東北大学蔵)の如きものまである。明治以来、古筆鑑定の先覚者、第一人者と仰がれたのは、このような実技精進によることは言を俟たない。また肉筆模本制作と併行して、明治41年の古筆名蹟集「月影帖」をはじめ、木版やコロタイプによる幾多の複製本を刊行し、実技家、研究者、鑑賞家に少なからぬ恵沢を与えた。一方古美術の大収蔵家益田孝・原富太郎・藤原銀次郎・松永安左衛門・畠山一清らと親しく、古美術名品の流通に参画した。昭和25年文化財専門審議会専門委員に就任、昭和30年紫綬褒章、昭和35年日本芸術院恩賜賞、昭和39年勲四等旭日小綬章を受章した。模写作品中重要なものを次に掲げる。
明治26~27年 秋元本・紫式部日記絵巻、秋元本・寝覚物語絵巻
明治31年 蜂須賀本・紫式部日記絵巻
明治33~34年 益田本・源氏物語絵巻
明治35~40年 西本願寺本・三十六人家集
明治39年 三井本・元永本古今和歌集
大正初期 益田本・久能寺経
大正9~14年 厳島神社・平家納経
大正15~昭和6年 徳川本・源氏物語絵巻
昭和13~14年 関戸本・病草子絵巻
昭和23~30年 鉄舟寺、武藤本・久能寺経
昭和30~35年 四天王寺・法華経(料紙作成)
昭和39年 慈光寺・法華経補写巻(料紙作成)

出 典:『日本美術年鑑』昭和51年版(333頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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