前大峰

没年月日:1977/06/08
分野:, (工)

 輪島塗沈金技術保持者(人間国宝)の前大峰は、6月8日心筋コウソクのため、石川県輪島市河井町の自宅で死去した。享年86。本名得二。明治23年11月10日石川県鳳至郡に生れ、明治38年粟蔵尋常高等小学校高等科を卒業した。同40年当時輪島で、沈金佐助といわれた名工、三代目橋本佐助に師事し、昭和4年第10回帝展に「蟹と雑草文沈金丸盆」が初入選した。その後、第11回帝展「遊鯰沈金彫手筥」(特選)(宮内省買上)第13回帝展「漆器雉子沈金衣裳筥」(無鑑査)(宮内省買上)、第15回帝展「猫飾筥」(政府買上)、昭和11年新文展第1回展「秋乃野文庫」(無鑑査)(李王職御買上)、第5回新文展「粟鶉飾筥」(無鑑査)(京都市美術館買上)等の作品で沈金家として世に出、また昭和16年には石川県立工業学校教授嘱託となって、後進の指導にあたった。戦後は専ら日展で活躍し、おもな作品に昭和21年第2回日展「ひな鶏飾筥」(特選)、第5回「漆器蘭と猫の図小屏風」(文部大臣賞)、昭和37年「猫文飾筥」(文化財保護委員会買上)がある。また第4回、第10回には日展審査員、第8回では参事に推薦され、昭和30年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。昭和33年には日本工芸会理事となり、また皇居仮宮殿棚飾用飾筥の御用をつとめている。翌34年石川県伝統工芸展で好評を博した「沈金けはい(気配)飾筥」(通称猫文飾筥)は文化財保護委員会買上げとなった。同氏は輪島塗の素朴な沈金技法を新しく開拓し、平面的で品位に乏しいといわれていたその表現技術を、豊かな芸術性高いものにしてその功績を高く評価された。石川県文化功労者(昭和37年)。輪島市名誉市民(昭和38年)。紫綬褒章受賞(昭和39年)

出 典:『日本美術年鑑』昭和53年版(265-266頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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