漆原木虫

没年月日:1953/06/06
分野:, (版)

 版画家漆原木虫は6月6日肺臓癌のため国立東京第二病院で死去した。享年64歳。告別式は世田谷区の自宅で行われた。名由次郎、明治21年東京に生れた。早くから木版彫刻の技術に習熟しており、19歳の時渡英、1910年の日英博覧会の折にはロンドンにいて、展覧会場において木版技術の実演を行つた。その後30年間ロンドンとパリに滞在して多くの版画を作り、日本の伝統的な木版技術による作品はイギリス、フランスの愛好家に好まれた。イギリスの画家フランク・ブランギンに認められ、彼の画を木版にした。自画、自刻、自摺の作品はヨーロッパでは暖く迎えられ、鑑賞された。大英博物館の嘱託にもなつた。昭和9年日本に帰り、帰朝後も版画を作つている。日本での作品には西洋の愛好家に特に評判であつた風景にも匹敵する馬や花の静物が含まれている。それらは白から灰色を通して深い黒い列なる階調に独自の美しさをみせている。しかし赤、緑、青と色彩を効果的に用いた「椿」のような作品もある。外人に木版を教え、また戦後は米国に作品を送つて、日本よりもむしろ外国で著名な作家であつた。

出 典:『日本美術年鑑』昭和29年版(159頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
to page top