両角かほる

没年月日:2010/07/16
分野:, (学)
読み:もろずみかほる

 泉屋博古館分館学芸員の両角かほるは7月16日、癌のため急逝した。享年39。1970(昭和45)年7月22日、横浜市に生まれる。1989(平成元)年、学習院大学文学部哲学科に入学。93年、学習院大学大学院人文学研究科哲学専攻博士前期課程(指導教官 小林忠教授)に進み95年に修了。その後、学習院大学研究生、共立女子大学家政学部科目等履修生となり、日本染織史などを学ぶ。この間、93年より96年まで東京国立博物館学芸部工芸課染織室に事務補佐員として勤務。長崎巌(現共立女子大学教授)の指導を受け、主に能装束を研究。併せて、実践的な作品の扱いを体得する。97年「摺匹田の発生と流行に関する一考察」(『日本風俗史学会会誌』35号)を発表。98年泉屋博古館分館開設準備室に勤務。建物、収蔵庫などの設計・設備の打ち合わせに勤しむ。2002年の開館以降、工芸担当として活躍し多くの展覧会を手掛ける。主なものに「特別展 共立女子大学コレクション 華麗なる装いの世界 江戸・明治・大正」(2005年)、「特別展 金箔のあやなす彩りとロマン 人間国宝 江里佐代子・截金の世界」(2005年)、「大名から公爵へ―鍋島家の華―」(2007年)「近代工芸の華 明治の七宝―世界を魅了した技と美―」(2008年)、「板谷波山をめぐる近代陶磁」(2009年)などがあげられる。一方、国内外において調査、研究も精力的に行い、「翻刻『御茶會記』(上)・(下)」を『泉屋博古館紀要』第19巻・20巻(2003年、2004年)に発表。04年から2年間にわたり『茶道の研究』三徳庵、名品シリーズを担当。05年、「黒綸子地蝶捻花模樣小袖」(『國華』(特輯寛文小袖)110巻9号、掲載通号1314)を発表。06年「風景をまとう」(『『KIMONO』小袖にみる華 デザインの世界』展図録)を執筆。09年には「東京瓢池園小史」(『幻の京焼 京都瓢池園』展図録)を執筆。同年より服飾文化共同拠点において共同研究「三井家伝来小袖服飾類に関する服飾文化史的研究:現存遺品と円山派衣裳下絵との関係を中心に」(植木淑子、長崎巌、福田博美、両☆かほる、菊池理予)を開始。これらの成果は『服飾文化共同研究最終報告書』(文化ファッション研究機構、2011年)にまとめられている。10年、「泉屋博古館創立50周年記念 住友コレクションの茶道具」展開催に向け、自宅にてカタログ編集、展示配置予定図などの作業を進める。このカタログが遺著となる。教育面では、非常勤講師として実践女子大学では博物館実習を、共立女子大学では博物館各論と博物館実習を担当していた。泉屋博古館分館の川口直宜館長による「追悼・両角かほるさん」(『泉屋博古館紀要』第27巻、2011年)には、生前の活躍の様子や人となりがまとめられている。

出 典:『日本美術年鑑』平成23年版(440頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「両角かほる」『日本美術年鑑』平成23年版(440頁)
例)「両角かほる 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28498.html(閲覧日 2024-03-29)
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