樋口清治

没年月日:2008/08/17
分野:, (学)

 応用化学の研究者で東京文化財研究所名誉研究員の樋口清治は、8月17日、心不全のため東京都葛区の病院で死去した。享年82。1926(大正15)年6月3日、東京市に生まれる。1943(昭和18)年10月に工学院本科応用化学科を卒業、同年12月より東京帝国大学附属綜合試験所に入所、45年12月に同助手、46年3月文部教官、49年5月東京大学助手に任命される。52年11月、当研究所保存科学部科学研究室文部技官に転任の後、73年7月の修復技術部発足に伴い、第2修復技術研究室長に昇任。78年には第3修復技術研究室長に配置換となり、82年4月に修復技術部長、翌年3月定年により退官。当研究所在職時は、我が国の高度経済成長期、文化財保存修復に関する概念が進展するのにともなった新しい修復技術や材料開発の要請に対して、合成樹脂など近代的な材料を導入した。その実例は、彩色剥落止め、木造建造物部材修復、石造文化財修復、金属文化財修復、遺構の発掘処置法など多岐にわたった。特に木造建造物部材修復においては、人工木材の材質改良・文化財修復への導入に果たした功績は大きく、73年、重要文化財・旧富貴寺羅漢堂の再建において腐朽部材の合成樹脂による含浸強化および人工木材による欠損部分補修を採用し、当時所長であり再建事業の総括をした関野克とともに建築学会賞を受賞した。主要な著書は、『新建築学体系<50>歴史的建造物の保存』(共著 彰国社、1999年)や、『総説エポキシ樹脂 第4巻応用編Ⅱ』(共著 エポキシ樹脂技術協会、2003年)など。主要論文は『保存科学』に所載。退官後は株式会社京都科学の技術顧問として、文化財修復における民間の技術水準向上と修復倫理の普及に努めた。1997(平成9)年、勲四等旭日小綬章を受勲。

出 典:『日本美術年鑑』平成21年版(436-437頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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