土谷武

没年月日:2004/10/12
分野:, (彫)
読み:つちたにたけし

 彫刻家で新制作協会会員の土谷武は、10月12日、心不全のため東京都港区の病院で死去した。享年78。1926(大正15)年10月11日、京都府京都市に生まれる。生家の土谷家は、清水七兵衛を先祖とし、「瑞光」の窯名で代々製陶業を営んでいた(3代瑞光は、28年生まれの実弟稔が継ぐ。)。1939(昭和14)年4月、京都市立美術工芸学校彫刻科に入学。44年3月、同校補修科を修了した後、4月に東京美術学校彫刻科塑像部に入学。49年3月に同校卒業、同年世田谷区宮坂に友人たちと共同アトリエ「アトリエ・ド・ムードン」を建て制作する。この頃より、柳原義達と交流を深め、その親交は生涯にわたった。57年4月、日本大学芸術学部美術学科非常勤講師となる、また同年新制作協会会員となる。61年から63年までフランスに留学。68年に多摩美術大学美術学部彫刻科教授となる(73年まで)。75年4月、日本大学芸術学部芸術研究所教授となり、80年から同大学同学部教授となる(96年まで)。79年8月、第1回ヘンリー・ムーア大賞展(箱根、彫刻の森美術館)に招待出品し、優秀賞を受賞。83年10月、第17回サンパウロ・ビエンナーレに出品。大学における後進の指導と同時に、個展、新制作協会展、美術館における各種企画展等に積極的に出品をつづけた。1994(平成6)年3月、芸術選奨文部大臣賞受賞。95年1月、第36回毎日芸術賞受賞。96年11月、紫綬褒章を受章。97年12月、『土谷武作品集』(美術出版社)を刊行。98年9月に東京国立近代美術館において「土谷武展」を開催し、初期から最新作まで87点を出品し、本格的な回顧展となった(同展は、京都国立近代美術館、茨城県近代美術館を巡回)。初期からの具象的表現から、60年代以降には抽象表現に転向するが、その素材は、石、鋼材、木などを組み合わせた野外彫刻によって真価を発揮し、高く評価された。特に後年の作品に顕著に表現されたように、鉄という素材にこだわりながら、重さと軽さ、硬さとしなやかさ、塊と広がりに対する独自の造形感覚によって、現代日本彫刻における抽象彫刻の代表的な作家のひとりにあげられる。

出 典:『日本美術年鑑』平成17年版(356-357頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「土谷武」『日本美術年鑑』平成17年版(356-357頁)
例)「土谷武 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28308.html(閲覧日 2024-03-29)

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