佐々木剛三

没年月日:2002/05/26
分野:, (学)
読み:ささきこうぞう

 美術史家で早稲田大学名誉教授の佐々木剛三は5月26日、肺炎のため京都市上京区の病院で死去した。享年73。佐々木は1928(昭和3)年7月1日、京都市に生まれた。47年4月早稲田大学第一文学部に入学、安藤正輝のもとで中国と日本の美術史を学んだ。安藤は、美術史家であり、歌人でもあった會津八一の愛弟子であった。51年3月に同大学第一文学部芸術学科美術専修を卒業、52年5月より京都国立博物館に勤務、島田修二郎の下で研鑽を積んだ。61年5月に早稲田大学第一文学部助手、翌年4月に非常勤講師、64年4月に専任講師、67年4月に第一・第二文学部助教授、72年に第一・第二文学部教授となり、1994(平成6)年3月に退職するまで30年間にわたって後進の指導にあたった。この間、第一文学部美術史学専攻主任、第二文学部美術専攻主任、第一、第二文学部教務主任を務めたほか、65年8月からは奈良にある財団法人寧楽美術館理事の職にあった。また、アメリカの日本美術史研究者との交流を通じ、日本の美術史研究の国際的な発展にも貢献した。66年9月から1年間、ロックフェラー財団の奨学金を得てミシガン大学美術史学科客員研究員、79年5月から翌年7月までカリフォルニア大学(バークレー)美術史学科客員教授、81年9月から12月までミシガン大学美術史学科の客員教授を勤め、アメリカにおける日本美術の研究者の育成に力をつくした。京都国立博物館時代での佐々木は、58年の美術史学会総会での「清涼寺釈迦像の図像学的考察」、あるいは60年の『美術史』38号での「兜跋毘沙門天像についての一考察」など仏教彫刻についての論考を発表していた。その後、早稲田大学に移ってからは生涯を通じての課題の一つとなった江戸後期の文人画、わけても田能村竹田の研究を本格化させており、65年の『美術史研究』3号の「田能村竹田筆<貴妃横琴図>」、82年の『古美術』64号の「木米と竹田」、「田能村竹田展」図録(大分県立芸術会館)の「田能村竹田と中国」などの論文のほか、『大分県先哲叢書 田能村竹田資料集』などの著作がある。さらに、万福寺を中心とする江戸期の禅宗美術や中国絵画、近世の画譜類にも研究の手を広げており、63年の『みづゑ』706号に「明清画と近代-中国明清美術展を機に」、73年の『古美術』43号に「明朝遺民龔賢」、翌年の『古美術』44号に「中国の論画と日本の画評」、88年の「中国古代版画展」図録(町田市立国際版画美術館)での「中国画譜と南宗文人画」、90年の「近世日本絵画と画譜絵手本」展図録(町田市立国際版画美術館)での「絵画と版画」などがある。また一方で、仏教絵画でも68年の『国華』912号で発表した「歓喜光寺蔵一遍聖絵の画巻構成に関する諸問題とその製作者について」のほか、垂迹美術の分野にも強い興味をもって研究を行っていた。海外での発表も数多く、67年にプリンストン大学で「On the Origin of the Style of Buddhist Sculptures in the Heian Period」、76年にニューヨーク日本協会神道シンポジウムで「On the Suijaku Painting」、84年にミシガン大学美術館で「On the Forgeries of Chikuden Paintings」、ウィスコンシン大学でのアメリカ美術史学会総会で「Some Thoughts on the Rakuchu―Rakugai Zu Screens」と題して講演を行った。佐々木の専攻は日本美術とはいえ、博く豊かな学識をそのままに反映して、関心は多岐にわたっている。それだけにその研究分野、領域は幅広いものがあるが、なかでも厳しい鑑識眼にも裏付けられた、垂迹美術や田能村竹田の絵画についての論考が、その研究の基盤となるような重要な仕事であった。研究の過程であつめられた資料の保存、保管等にも細かに気を配っていたが、生前、苦労して蒐集した明代の「顧氏画譜」、清初期の「芥子園画伝」など和本のコレクションが大阪府和泉市立久保惣記念美術館におさめられた。

編著書

『竹田』(鈴木進編)(日本経済新聞社 1963年) 
『万福寺』(中央公論美術出版 1964年) 
『清凉寺』(中央公論美術出版 1965年) 
『竹田』(三彩社 1970年) 
『日本美術絵画全集21 木米・竹田』(集英社 1977年) 
「南画十選」『日本経済新聞』 1987年5月4日~5月16日 
『大分県先哲叢書 田能村竹田資料集』(大分県教育庁(監修・編集) 1992年) 
『神道曼荼羅の図像学』(ぺりかん社 1999年) 

出 典:『日本美術年鑑』平成15年版(243頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「佐々木剛三」『日本美術年鑑』平成15年版(243頁)
例)「佐々木剛三 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28255.html(閲覧日 2024-03-29)

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