二川幸夫

没年月日:2013/03/05
分野:, (写)

 建築写真家、編集者の二川幸夫は、3月5日腎盂がんのため死去した。享年80。
 1932(昭和7)年11月4日大阪市に生まれる。大阪市立都島工業高等学校で建築を学び、早稲田大学文学部に進む。美術史を専攻し56年に卒業。在学中、同大学教授で建築史家の田辺泰の示唆を受けて飛騨高山の古民家を訪れ、これをきっかけに日本各地の民家の撮影に着手した。約7年にわたって続けられた取材は、57年より『日本の民家』(文・伊藤ていじ、美術出版社、全10巻、1957-1959年)として刊行され、59年に第13回毎日出版文化賞を受賞。以後、建築写真家として古典的な建築物から現代の建築家の作品まで、国内外の多様な建築の撮影を重ねた。70年、建築専門の出版社「A. D. A. Edita Tokyo」を設立。企画・編集・撮影をてがけた『フランク・ロイド・ライト全集』(全12巻、1985-1991年)や建築写真誌『GA(Global Architecture)』(77号まで発行、1970-1999年)など数多くの書籍、雑誌を刊行する。その多くは日英併記であり、上質な写真によって海外の建築を紹介するとともに日本の建築を国際的に発信するうえで大きな役割を担った。
 建築空間を的確にとらえる写真家としての確かな技量に加え、安藤忠雄の初期作品をいちはやく評価し、その後長く撮影を続け作品集を作るなど、現代建築に関する造詣の深さ、見識の高さで知られ、その写真は記録としてだけでなくすぐれた批評としても機能し、建築界に影響を与えるものであり続けた。出版活動も含めた活動は国際的にも評価され、75年アメリカ建築家協会(AIA)賞、85年国際建築家連合(UIA)賞、1997(平成9)年日本建築学会文化賞など国内外から多くの賞を受けた他、97年に紫綬褒章、2005年には旭日小綬章を受章している。
 死去の直前、国内の美術館としては初の個展となる「二川幸夫・建築写真の原点 日本の民家一九五五年」(パナソニック汐留ミュージアム、2013年、青森県立美術館に巡回)が開会し、講演会を行うなど、最晩年まで精力的な活動を展開していた。

出 典:『日本美術年鑑』平成26年版(450-451頁)
登録日:2016年09月05日
更新日:2016年09月05日 (更新履歴)
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