山口桂三郎

没年月日:2012/01/17
分野:, (学)

 浮世絵研究者で国際浮世絵学会会長の山口桂三郎は1月6日、東京国立博物館での中国故宮博物院展開会式出席の後に転倒して救急治療を受けたが、1月17日未明に心不全のため死去した。享年83。
 1928(昭和3)年11月3日、東京千代田区に生まれる。生家は駿河台ホテルを営んでいた。本名は昭三郎。桂三郎は自らの好む桂の字を入れた筆名である。明治大学史学科で神道美術を中心に学び、57年、明治大学大学院史学専攻修士課程を修了。59年に「雪舟」(『駿台史学』9号)を発表。60年、同博士課程を修了。59年12月「垂迹画の特長」(『美学』43号)を、61年には「拝殿と能舞台-万祥殿の建築について-」(『風俗』1巻2・3号)、62年には「板絵春日曼荼羅・仏涅槃図解説」(『国華』840号)、「風俗資料としての神道絵画」(『風俗』2巻2・3号)を発表するが、藤懸静也と出会って浮世絵の研究に進む。日本浮世絵協会に所属して、研究者のみならず、浮世絵版画の工房や技術者、愛好家や美術商をも含む浮世絵界全体を盛り立てるべく尽力し、会誌『浮世絵芸術』の編集発行に長く携わった。61年より日本大学、戸板女子短期大学、東洋大学、明治大学等にて非常勤講師をつとめて浮世絵について教授し、76年に立正大学教養学部助教授となり、80年に同教授となった。1991(平成3)年に日本浮世絵協会理事長となり、また同年から10年間、櫛形町春仙美術館館長をつとめた。98年日本浮世絵協会が国際浮世絵学会に改組されるにあたり、同会会長となり、国際浮世絵大会の実施、平成の浮世絵事典の編集刊行、学会企画の浮世絵展の実施を目標に掲げ、国際学会の開催や2008年に学会編による『浮世絵大事典』(東京堂出版)の刊行を実現させた。一方、衰退していく浮世絵制作技術を残し、次代に継承しようと、日本の伝統工芸品としての浮世絵の評価の確立に尽力。浮世絵の支持体である和紙製造、木版画の版木作成、摺りの技術の伝承のために、92年の東京伝統木版画協会の発足に参加し、「江戸木版画」が東京都伝統工芸品の指定を受けるのに寄与した。また、98年から04年まで安藤広重の「名所江戸百景」120景の復刻事業に参加し、それらの復刻作品の展覧会開催にも尽力して浮世絵作成技術の伝承と作品の普及につとめた。07年に「江戸木版画」が経済産業省の「伝統的工芸品」に指定される際にも、同省への説明に出向いている。99年3月に立正大学を定年退職して同名誉教授となり、長年の研究をまとめた「浮世絵における美人・役者絵の史的研究」で04年、立正大学より文学博士号を取得した。能楽にも造詣が深く、特権階級の文化や信仰にまつわる造形への理解を踏まえて、市井の人々の生活と深く結びついた浮世絵について考究し、その普及につとめた。
著作には以下のようなものがある。
『浮世絵名作選集19 江戸名所』(日本浮世絵協会編、山田書院、1968年)
『東洋美術選書 広重』(三彩社、1969年)
『浮世絵大系7 写楽』(編集製作:座右宝刊行会、集英社、1973年)
『浮世絵大系11 広重』(同上、1974年)
『浮世絵概論』(言論社、1978年)
『浮世絵聚花4 シカゴ美術館 1』(鈴木重三と共著、小学館、1979年)
『浮世絵聚花11 大英博物館』(楢崎宗重と共著、小学館、1979年)
『浮世絵聚花12 ギメ東洋美術館・パリ国立図書館』(小学館、1980年)
『原色浮世絵大百科事典6-9巻』(浅野秀剛と共著、大修館書店、1980-82年)
『肉筆浮世絵 清長 重政』(集英社、1983年)
『写楽の全貌』(東京書籍、1994年)
『東洲斎写楽』(浅野秀剛・諏訪春雄と共著、小学館、2002年)

出 典:『日本美術年鑑』平成25年版(406-407頁)
登録日:2015年12月14日
更新日:2016年08月09日 (更新履歴)
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